避妊に失敗してしまった場合、アフターピルの服用によって、望まない妊娠を避けられる可能性があります。しかし、その効果は絶対ではないこと、薬の種類や服用するタイミングによって効果が異なることには注意が必要です。
本記事では、薬の種類と服用するタイミングごとの効果を紹介します。
監修医師
各務 康貴
医療現場で予防の重要性や予防に取り組んでもらうことの難しさを痛感。美容という切り口で本質的な予防につなげる入口として、口腔という臓器に興味を持つ。口腔環境が多くの臓器に影響を及ぼし、多くの病気に繋がってしまうというポイントから予防について新聞・テレビ・WEBメディア等で情報を発信している。
1. はじめに:避妊率と妊娠阻止率の違い
アフターピルの効果を正しく理解するためには、「避妊率」と「妊娠阻止率」という2つの指標を知ることが重要です。これらの指標は、アフターピルの効果を異なる観点から評価するものです。
- 避妊率:アフターピルを服用した人のうち、妊娠しなかった人の割合
- 妊娠阻止率:アフターピルを服用しなかった場合に予想される妊娠数のうち、実際に防げた妊娠の割合
例えば、100人がアフターピルを服用し、2人が妊娠した場合であれば、避妊率は以下のようになります。
避妊率 = (100 - 2) / 100 × 100 = 98%
一方、通常なら8人が妊娠すると予想される状況で、2人が妊娠した場合、妊娠阻止率は次のようになります。
妊娠阻止率 = (8 - 2) / 8 × 100 = 75%
このように、同じ状況でも2つの指標で異なる数値が得られます。アフターピルの効果を正確に理解するためには、両方の指標を考慮することが大切です。
2. ヤッぺ法(Yuzpe法)
ヤッぺ法とは、中用量ピルを複数回服用することで緊急避妊を行う方法です。エストロゲンとプロゲステロンの急激な増加によって、排卵を抑制したり、受精卵の着床を妨げたりすることで、妊娠しないようにします。
ヤッぺ法の避妊率と妊娠阻止率は以下の通りで、服用のタイミングによって大きく変わります。
服用タイミング | 避妊率 | 妊娠阻止率 |
---|---|---|
24時間以内 | 約75% | 約70-80% |
48時間以内 | 約65% | 約60-70% |
72時間以内 | 約55% | 約50-60% |
ただし、ヤッぺ法には次のような注意点があります。
- 吐き気や嘔吐などの副作用が比較的強い
- 他のアフターピルと比べると確実性が低い
- 通常の経口避妊薬を代用するため、適切な用量の把握が難しい
これらの理由から、現在では、より効果が高く、副作用の少ないアフターピルの服用が推奨されています。
3. 72時間用アフターピル(レボノルゲストレル含有緊急避妊薬)
72時間用アフターピルは、レボノルゲストレルを主成分とする緊急避妊薬です。黄体形成ホルモン(LH)の急激な上昇を抑え、排卵を遅らせたり、子宮内膜へ影響し、受精卵が着床しにくい環境を作り出すことで、妊娠を防ぎます。
72時間用アフターピルの避妊率と妊娠阻止率は、服用のタイミングによって次のように異なります。
服用タイミング | 避妊率 | 妊娠阻止率 |
---|---|---|
24時間以内 | 95% | 85% |
48時間以内 | 85% | 75% |
72時間以内 | 75% | 65% |
このように、72時間用アフターピルは、服用が早いほど効果が高くなります。できるだけ性行為後24時間以内に服用することが推奨されますが、72時間以内であれば一定の効果が期待できます。
ただし、どんなに早く服用しても、その効果は100%ではないため、次の月経が来るまでは妊娠の可能性を考慮する必要があります。
4. 120時間用アフターピル(ウリプリスタル酢酸エステル)
120時間用アフターピルの主成分であるウリプリスタル酢酸エステルは、排卵抑制・遅延作用を持つ薬剤です。子宮内膜を変化させ、受精卵の着床を妨げる効果もあります。
この薬剤は、性交後最大120時間(5日間)まで服用可能で、他のアフターピルよりも長い期間効果を発揮します。
120時間用アフターピルのタイミングごとの避妊率と妊娠阻止率は、以下のとおりです。
服用タイミング | 避妊率 | 妊娠阻止率 |
---|---|---|
24時間以内 | 98.5% | 85% |
48時間以内 | 98% | 85% |
72時間以内 | 98% | 80% |
120時間以内 | 98% | 75% |
このように、120時間用アフターピルは服用のタイミングが遅くなっても比較的高い効果を維持しますが、避妊の可能性を高めるには、やはり早めの服用が大切です。
5. まとめ:アフターピルの種類と服用タイミングによる効果の違い
アフターピルの種類と服用タイミングによって、避妊率と妊娠阻止率は大きく変わります。3種類のアフターピルの特徴を以下の表にまとめました。
種類 | 有効期間 | 主な作用機序 | 特徴 | 避妊率 | 妊娠阻止率 |
---|---|---|---|---|---|
ヤッぺ法 | 72時間以内だが24時間以内が望ましい | ホルモンバランス変化 | 副作用が強く避妊効果が低い | 約55-75% | 約50-80% |
72時間用 | 72時間以内 | 排卵遅延 | 副作用が比較的少ない | 75-95% | 65-85% |
120時間用 | 120時間以内 | 排卵抑制・遅延 | 副作用が比較的少なく最も長時間有効 | 98-99% | 75-85% |
いずれの方法も、服用が早ければ早いほど高い効果が期待できます。ただし、性交後からの経過時間によっては、効果が期待できる薬の種類が制限されるため、できる限り専門の医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。