ピル

低用量ピル、緊急避妊ピルそれぞれの特徴や違い、注意ポイントを医師が解説

リリモアクリニック内科歯科 院長 各務 康貴

監修医師

各務 康貴

大分大学医学部医学科卒業。医師として救急医療や在宅医療に従事し、マウスピース歯科矯正hanaravi(ハナラビ)を提供する株式会社DRIPSを創業。
医療現場で予防の重要性や予防に取り組んでもらうことの難しさを痛感。美容という切り口で本質的な予防につなげる入口として、口腔という臓器に興味を持つ。口腔環境が多くの臓器に影響を及ぼし、多くの病気に繋がってしまうというポイントから予防について新聞・テレビ・WEBメディア等で情報を発信している。
目次

1.はじめに

はじめに

近年、避妊手段として注目を集めている「低用量ピル」と「緊急避妊ピル」。しかし、その特徴や使い方、注意点などは一体どのようなものなのでしょうか。本記事では、これらのピルについて医師が詳しく解説します。

まず、低用量ピルと緊急避妊ピルの基本的な特徴について説明します。次に、それぞれのピルの違い、具体的には避妊のための使用タイミング、作用機序の違い、副作用の違いについて詳しく解説します。

また、それぞれのピルの注意ポイントとして、低用量ピルと緊急避妊ピルそれぞれの注意点を挙げます。そして最後に、医師に相談すべき時についても触れます。

本記事を通じて、より安全にこれらのピルを利用するための知識を皆様に提供できれば幸いです。

2.低用量ピルと緊急避妊ピルの基本的な特徴

低用量ピルと緊急避妊ピルの基本的な特徴

(1)低用量ピルとは

低用量ピルとは、女性の排卵を抑制し、避妊効果を得るための薬です。エストロゲンとプロゲステロンという2種類のホルモンが配合されています。毎日一定の時間に1錠服用することで、ホルモンバランスをコントロールし、排卵を抑制します。

以下の表は、低用量ピルの基本的な特性をまとめたものです。

特性内容
形状小さな円形の錠剤
成分エストロゲン、プロゲステロン
効果排卵抑制、避妊
服用方法毎日同じ時間に服用

注意すべき点として、低用量ピルは避妊効果のみならず、月経不順の改善や月経痛の軽減といった効果もありますが、性病から身を守る効果はありません。それらに対する予防策が必要です。

(2)緊急避妊ピルとは

「緊急避妊ピル」とは、性交後に服用することで避妊効果を発揮する医薬品です。「モーニングアフターピル」とも呼ばれ、予期しない性交や避妊失敗後の緊急時に用います。主に2種類の成分が用いられます:レボノルゲストレルとウリプリストール。

【表1:緊急避妊ピルの成分】

成分名服用時間一回の服用量
レボノルゲストレル性交後72時間以内1.5mg
ウリプリストール性交後120時間以内30mg

このピルは一度のみ服用し、その後の性行為に対しては効果を持ちません。また、妊娠を防ぐための常用避妊法として用いるものではありません。そして、服用後に副作用が出ることもありますので、使用には医師の指導が必要です。

3.低用量ピルと緊急避妊ピルの違い

低用量ピルと緊急避妊ピルの違い

(1)避妊のための使用タイミング

避妊のための使用タイミングは、低用量ピルと緊急避妊ピルでは大きく異なります。

低用量ピルは、名前の通り1日ごとに低い用量を服用することで、定期的に排卵を抑制し、避妊効果を維持します。具体的には、月経初日から服用を始め、21日間続けて飲みます。その後、7日間の休薬期間を設け、新たなパックを開始するというサイクルを繰り返します。

一方、緊急避妊ピルは、性交後72時間以内に服用することで一時的に排卵や受精を防ぎます。性交後すぐに飲むほど効果が高く、使用は1回の性行為につき1回限りとなります。

どちらも医師の指導のもと正しく使用することが重要です。

(2)作用機序の違い

低用量ピルと緊急避妊ピルは、その作用機序に違いがあります。まず、低用量ピルは主に女性ホルモンの一種であるプロゲステロンを人工的に補うことで、排卵を抑制し避妊効果を発揮します。一方、緊急避妊ピルは、避妊のための特別なケースで使用されます。性交後72時間以内に飲むことで、排卵を遅らせるまたは阻止することで避妊を行います。下記の表で、二つのピルの作用機序の違いを簡単にまとめてみました。

低用量ピル緊急避妊ピル
作用機序排卵抑制排卵遅延または阻止

このように、同じ避妊ピルでも種類によって作用機序が異なります。どちらのピルを使用するかは、自身の体調や避妊のニーズによりますので、医師と十分な相談を行うことが重要です。

(3)副作用の違い

低用量ピルと緊急避妊ピル、それぞれには異なる副作用があります。

低用量ピルの主な副作用には、頭痛、吐き気、胸の張り、体重の増加などが挙げられます。また、使用初期に生理不順が出ることもありますが、数ヶ月で体が慣れることが多いです。

一方、緊急避妊ピルの副作用としては、服用後に吐き気や下痢を感じることがあります。効果が強いために体調不良を引き起こすことがあるのです。また、一部の人には生理周期の乱れもみられます。

以下に表で主な副作用をまとめました。

低用量ピル緊急避妊ピル
頭痛
吐き気
下痢
体重増
生理不順

ただし、この副作用は人それぞれ異なりますし、全ての人が経験するわけではありません。気になる症状があれば、すぐに医師に相談しましょう。

4.各ピルの注意ポイント

各ピルの注意ポイント

(1)低用量ピルの注意点

低用量ピルの使用に当たってはいくつかの注意点があります。

まず、ピルの効果が発揮されるためには正確な時間に毎日服用することが重要です。タイミングを逸すると、避妊効果が低下します。

また、低用量ピルは避妊以外の効果、例えば月経痛の軽減や皮膚トラブルの改善なども期待できますが、使用開始直後は一時的に頭痛や吐き気などの副作用を感じることがあります。

さらに、服用を開始する前には必ず医師の指導を受けることが大切です。特に、持病やアレルギー、服用中の薬がある場合は注意が必要です。これらの状況を医師に伝え、適切な指導を受けなければなりません。

以下に注意点をまとめた表を示します。

注意点詳細
服用時間毎日同じ時間に服用する
副作用頭痛や吐き気などを感じることがある
医師の指導服用前に必ず医師の指導を受け、自身の状況を伝える

(2)緊急避妊ピルの注意点

緊急避妊ピルは、性交後、急ぎで避妊を必要とする際に用いられます。しかし、誤解を招くことなく、賢明に使うためにはいくつかの注意点があります。

一つ目は、緊急避妊ピルが100%の避妊効果を保証するわけではないことを理解することです。ピルは性交後すぐに服用することで効果が最大化されますが、その効果は時間が経つにつれて低下します。

二つ目の重要なポイントは、緊急避妊ピルはレギュラーな避妊方法の代替品ではないということです。その名前が示す通り、このピルは緊急時にのみ使用すべきであり、計画性のある避妊方法としては不適当です。

また、服用後に吐き気や頭痛などの副作用が見られた際には医師に連絡するようにしましょう。緊急避妊ピルは医師の指導のもと、適切に使用することが求められます。

5.医師に相談すべき時

医師に相談すべき時

(1)副作用が出た時

ピルの副作用として一般的に知られているのは、吐き気、頭痛、乳房の張りなどがあります。これらは服用初期によく見られる症状で、多くの場合は数ヶ月で改善します。

しかし、副作用が続く場合や、以下のような重篤な症状が現れた時は、すぐに医師に相談することが必要です。

副作用症状
血栓症足の腫れ、痛み
心血管疾患胸の痛み、呼吸困難
肝機能障害黄疸(肌や目の黄ばみ)

医師から指導を受け、適切な対応をすれば、副作用はコントロール可能です。躊躇せずに医師に相談しましょう。

(2)ピルを飲み忘れた時

ピルの避妊効果をしっかりと発揮させるためには、指定された時間にコツコツと毎日飲み続けることが重要です。しかし、どうしても飲み忘れてしまった場合、その対応が大切となります。

低用量ピルの場合、24時間以内に気づけばすぐに飲むようにしましょう。そして、その次の日も通常通りの時間に飲みましょう。

一方、緊急避妊ピルは性交後72時間以内に服用することが条件ですが、飲み忘れた場合はただちに医療機関へ相談することをお勧めします。

以下にそれぞれの対応を表にまとめてみました。

ピルの種類飲み忘れた時の対応
低用量ピル24時間以内に飲む
緊急避妊ピル医療機関へ相談

いずれの場合も、自己判断せず、安全・確実に避妊するためにも医師の指示に従うことが大切です。

(3)性交渉後、緊急避妊が必要になった時

性交渉後、避妊が必要になった場合、緊急避妊ピルが利用されます。ですが、その使用は注意が必要です。緊急避妊ピルは、性行為後72時間以内になるべく早く服用することが推奨されています。その理由は、性交後時間が経つと避妊効果が下がるからです。また、1回の性行為に対して1回服用することで、その都度避妊効果が得られます。

一方、性行為後も低用量ピルの服用を続けることで、避妊効果が持続します。しかし、ピルを飲み忘れた場合や、吐き気などの副作用が出た場合には医師に相談する必要があります。

また、緊急避妊ピルはあくまで「緊急」時の避妊手段であり、計画的な避妊手段としての使用は推奨されません。繰り返し使用すると副作用のリスクが高まる可能性があるからです。適切な避妊方法を選ぶためにも、医師や薬剤師との相談が重要です。

6.まとめ

低用量ピルと緊急避妊ピルは、それぞれ特徴と使い方、注意点が異なることを理解しましょう。低用量ピルは毎日決まった時間に服用する避妊法で、作用機序も副作用も緊急避妊ピルとは異なります。また、緊急避妊ピルは一時的な避妊方法で、性交後72時間以内に服用する必要があります。

以下の表で、両者の主な特徴と注意点を再確認しましょう。

低用量ピル緊急避妊ピル
服用タイミング毎日一定性交後72時間以内
副作用頭痛、吐き気など頭痛、吐き気、月経不順など
注意点決まった時間に服用、忘れたら医師相談性交後すぐに服用、副作用出たら医師相談

何か問題が生じた場合や、ご自身の状態に不安がある時は必ず医師に相談してください。正しく理解し、適切に使用することが大切です。

当サイトの監修医師について

当サイトは、医師資格を有する医師の監修のもと、サイト運営を行なっております。

リリモアクリニック内科歯科 院長 各務 康貴
リリモアクリニック内科歯科 院長
各務 康貴

大分大学医学部医学科卒業。医師として救急医療や在宅医療に従事し、マウスピース歯科矯正hanaravi(ハナラビ)を提供する株式会社DRIPSを創業。
医療現場で予防の重要性や予防に取り組んでもらうことの難しさを痛感。美容という切り口で本質的な予防につなげる入口として、口腔という臓器に興味を持つ。口腔環境が多くの臓器に影響を及ぼし、多くの病気に繋がってしまうというポイントから予防について新聞・テレビ・WEBメディア等で情報を発信している。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次