不眠症とは、良質な睡眠を得ることが困難な状態のことです。特に男性は、仕事や家庭のストレス、不規則な生活習慣などが原因で不眠症に悩むことが多いといわれています。
この記事では、そのような男性特有の不眠症の原因と、それに対する治療法について詳しく解説します。ぜひ、お悩みの解決と、日々の充実に役立ててください。
監修医師
各務 康貴
医療現場で予防の重要性や予防に取り組んでもらうことの難しさを痛感。美容という切り口で本質的な予防につなげる入口として、口腔という臓器に興味を持つ。口腔環境が多くの臓器に影響を及ぼし、多くの病気に繋がってしまうというポイントから予防について新聞・テレビ・WEBメディア等で情報を発信している。
不眠症とは何か、その影響について
不眠症とは、一晩で6時間以上の睡眠が取れない状態が3ヶ月以上続く症状を指します。眠るための十分な機会や環境があるにも関わらず、睡眠の質や量が乏しく、日中の活動に支障をきたします。次のような問題が起こることがあるでしょう。
- 集中力の低下、記憶力の衰え、免疫力の低下
- うつ病、不安障害
これらの影響によって、日常生活や仕事に大きな支障をきたす可能性があり、早急な対策が求められます。
不眠症の主な症状
不眠症には、大きく分けて4つの主な症状があります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
症状 | 特徴 |
入眠困難 | ・寝床に入ってから30分以上眠れない ・考え事が止まらず、なかなか眠りにつけない |
中途覚醒 | ・夜中に目が覚めてしまう ・一度目覚めると、再び眠りにつくのに時間がかかる |
早期覚醒 | ・希望の起床時刻より1時間以上早く目覚めてしまう ・早く目覚めた後、再び眠ることができない |
熟睡障害 | 眠りが浅く、熟睡感が得られない 朝起きても疲れが取れていない感覚がある |
これらの症状が、週に3日以上、1ヶ月以上続く場合、不眠症と診断される可能性が高くなります。また、日中の眠気や集中力の低下、イライラ感などの症状を伴うこともあります。
不眠症の症状は人それぞれで、複数の症状が組み合わさって現れることもあります。自分の症状をよく観察し、適切な対処法を見つけることが大切です。
入眠困難
入眠困難とは、寝床に入ってから眠りにつくまでに30分以上かかる状態を指します。これは不眠症の主な症状の一つで、多くの男性が悩まされています。
入眠困難の主な特徴は以下の通りです。
- 布団に入っても、なかなか眠れない
- 頭の中が冴えて、考え事が止まらない
- 寝つきが悪く、イライラしてしまう
- 眠ろうとすればするほど、逆に目が覚めてしまう
入眠困難の原因には、以下のようなものがあります。
- ストレス:仕事や人間関係のプレッシャーが緊張を引き起こす
- 生活リズムの乱れ:不規則な就寝・起床時間が体内時計を狂わせる
- 寝る前の刺激:スマートフォンやPCの使用が脳を活性化させる
- 環境要因:騒音や室温、照明などが睡眠を妨げる
入眠困難は、翌日の集中力低下や疲労感につながるため、適切な対処が必要です。生活習慣の見直しや、リラックス法の実践などで改善できることもありますが、症状が続く場合は専門医への相談をおすすめします。
中途覚醒
中途覚醒とは、いったん眠りについたものの、夜中に目が覚めてしまう症状のことです。これは不眠症の中でも特に多く見られる症状の一つです。
中途覚醒には以下のような特徴があります。
- 夜中に1回以上目が覚める
- 再び眠りにつくまでに時間がかかる
- 朝まで熟睡した感覚が得られない
中途覚醒の主な原因として、以下が挙げられます。
- ストレスや不安
- 睡眠環境の問題(騒音、室温など)
- 睡眠時無呼吸症候群
- アルコールの過剰摂取
- 夜間頻尿
特に男性の場合、仕事のストレスや生活習慣の乱れが中途覚醒の原因となりやすいです。また、加齢とともに増加する前立腺肥大による夜間頻尿も、中途覚醒の要因となることがあります。
中途覚醒が続くと、日中の眠気や集中力低下、疲労感の蓄積などにつながる可能性があります。そのため、原因を特定し、適切な対策を講じることが重要です。
早期覚醒
早期覚醒は、不眠症の一つの症状で、朝早く目が覚めてしまい、その後眠れなくなる状態を指します。通常の起床時間より1〜2時間以上早く目覚めてしまうことが特徴です。
早期覚醒の主な特徴は以下の通りです。
- 朝早く目が覚める(通常の起床時間より1〜2時間以上早い)
- 目覚めた後、再び眠ることができない
- 眠りが浅くなり、疲労感が残る
早期覚醒は、特に中高年の男性に多く見られる症状です。その原因としては、以下のようなものが考えられます。
- ストレスや不安
- うつ病などの精神疾患
- 睡眠環境の変化(光、音、温度など)
- 加齢による体内時計の変化
早期覚醒が続くと、日中の眠気や集中力の低下、疲労感の蓄積などにつながる可能性があります。このため、症状が続く場合は、生活習慣の見直しや専門医への相談を検討することをおすすめします。
熟睡障害
熟睡障害は、十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、朝起きたときに疲労感が残り、爽快感を得られない状態を指します。この症状は、睡眠の質が低下していることを示唆しています。
熟睡障害の主な特徴は以下の通りです。
- 睡眠時間は十分だが、目覚めたときに疲れが取れていない
- 夜中に何度も目覚める、または浅い眠りが続く
- 朝起きたときに頭がボーっとしている
- 日中の眠気や集中力低下が顕著
男性の場合、熟睡障害の原因として以下が考えられます。
- 仕事のストレスによる交感神経の過剰な活性化
- 運動不足による身体的疲労の蓄積不足
- 過度の飲酒やカフェイン摂取
- 睡眠時無呼吸症候群(特に中年以降の男性に多い)
熟睡障害を改善するためには、就寝前のリラックスタイムの確保や、規則正しい生活リズムの維持が重要です。また、寝室環境の整備や適度な運動も効果的です。症状が続く場合は、睡眠専門医への相談をおすすめします。
不眠症が引き起こす問題
不眠症は、単に夜眠れないだけでなく、日中の生活にも大きな影響を及ぼします。主な問題点は以下の通りです。
問題点 | 具体的な内容 |
日中の眠気と集中力低下 | ・仕事や運転中の事故リスク上昇 ・生産性の低下 |
体調不良 | ・頭痛やめまい ・胃腸の不調 |
メンタルヘルスへの影響 | ・イライラや不安感の増大 ・うつ病発症リスクの上昇 |
生活習慣病のリスク増加 | ・高血圧 ・糖尿病 ・心臓病 |
さらに、長期的な不眠は以下のような深刻な問題を引き起こす可能性があります。
- 認知機能の低下:記憶力や判断力の低下
- 免疫力の低下:感染症にかかりやすくなる
- 肥満:食欲を調整するホルモンのバランスが崩れる
このように、不眠症は心身両面に大きな影響を与えます。そのため、早期に適切な対策を講じることが重要です。
不眠症に悩む人の割合
不眠症は、現代社会において非常に一般的な健康問題となっています。日本生活習慣病予防協会が2023年6月1日付で公開している「健康日本21で日本人はどのくらい健康になった?~第二次最終報告書と年次推移を図解~Part 2 喫煙、食生活、飲酒、運動、睡眠、心の健康など「一無、二少、三多」関連項目の目標達成率」によると、20歳以上で「睡眠による休養を十分に取れていない人の割合」は2018年度で21.7%と、日本人の5人に1人は十分な睡眠を確保できていないことがわかります。
2009年では19.4%、2012年には15.6%でしたが、2013年には23.0%に上昇、それ以降は20%前後を推移しており、悪化を続けていると評価されています。
よく眠れていない男性の割合
不眠症に悩む人は男女関係なくいるものです。中でも睡眠の質に問題を感じている男性の割合は、厚生労働省の発表している「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」によると、7割近くでした。年齢層別には次のとおりです。
年齢層 | 睡眠の質に問題を感じる人の割合 |
20〜29歳 | 72.7% |
30〜39歳 | 66.5% |
40〜49歳 | 71.0% |
50〜59歳 | 71.2% |
60〜69歳 | 66.7% |
70歳以上 | 65.1% |
男性特有の不眠症の原因
男性の不眠症の原因としては、主に以下の3つが挙げられます。
原因 | 特徴 |
---|---|
仕事・生活のストレス | 職場での役職やプライベートの問題からくるストレスが大きい |
生活習慣の乱れ | 飲酒・喫煙・運動不足など不健康な生活習慣が原因となることが多い |
ホルモンバランスの影響 | 加齢とともにテストステロンの分泌が減少し、睡眠リズムを乱す可能性がある |
以下ではそれぞれの原因について詳しく解説します。
仕事や生活のストレス
仕事や生活のストレスは、男性の不眠症を引き起こす大きな要因の一つです。
主なストレス源としては以下のようなことが挙げられます。
ストレス源 | 影響 |
---|---|
労働時間の長さ、業務の過重 | 睡眠時間の減少、心身の疲労 |
職場での人間関係 | 精神的ストレス、睡眠障害 |
家庭内の問題 | 緊張感の持続、リラックスできない状態 |
経済的な困難 | 不安感、心配事の増加 |
特に、現代社会では労働時間の長さや高いパフォーマンスへの要求、職場での人間関係など、仕事からくるストレスが増えています。このようなストレスが蓄積し、脳が興奮状態になると、自然な睡眠が得られなくなるのです。
また、家庭内での問題や経済的な困難など、私生活からくるストレスも睡眠を妨げます。
このようなストレスからくる不眠症には、適切なストレスマネジメントや専門的な医療機関による治療が有効です。
生活習慣の乱れ
不規則な生活習慣は、男性特有の不眠症の一因として挙げられます。具体的には、以下のような状況が考えられます。
- 飲食の乱れ:過度なカフェインやアルコール摂取、夜食などによって睡眠の質が低下する。
- 逆転生活:夜型の生活リズム、シフト制勤務による昼夜の逆転により睡眠リズムが乱れる。
- 運動不足:運動不足は睡眠の質を低下させる可能性がある。良質な睡眠を促すためにも適度な運動が必要。
これらの生活習慣の乱れは、心身の健康に深刻な影響を与え、不眠症を引き起こす可能性があるのです。毎日の生活習慣を見直すことで、睡眠の質向上につながります。
男性更年期障害
「ホルモンバランスの影響」とは具体的に何を指すかというと、男性の体内で分泌されるホルモン、特にテストステロンとメラトニンとの関係性を示しています。テストステロンは一日の活動力を維持するための重要なホルモンで、このホルモンの分泌が適正でないと不眠を引き起こすことがあります。一方、メラトニンは「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、日が暮れてくると分泌が増え、我々を睡眠状態へと導きます。
しかし、生活習慣の乱れやストレスなどによりこれらのホルモンバランスが崩れると、体内時計が乱れて睡眠障害を引き起こす可能性があります。このような時は、専門医の指導のもとでホルモンバランスを整える治療が必要となる場合もあります。
自分でできる男性特有の不眠症の解決策
不眠症に悩む男性に対する具体的な解決策は、以下の3つのステップがあります。
(1)生活習慣の見直し
(2)ストレスマネジメント
以下では、それぞれについて詳しく解説します。
1.生活習慣の見直し
生活習慣の改善は、不眠症治療において最も基本的な手段です。まず、定時の睡眠・起床を徹底し、規則正しいリズムを作りましょう。加えて、以下のような生活習慣の見直しも有効です。
- 喫煙・飲酒を控える:ニコチンやアルコールは睡眠を妨げる素因となる。
- カフェイン摂取の制限:寝る前のカフェイン摂取をやめる。特に就寝前3時間は避ける。
- 適度な運動を心がける:適度な運動は質の良い睡眠を助ける。ただし、就寝前の激しい運動は避ける。
これらを行ってみても改善しない場合は、専門的な診断を受けることをおすすめします。
2.ストレスマネジメント
ストレスは身体や心にとって大きな負荷となり、不眠症の原因となることが多いです。特に男性は、仕事や人間関係などからくるストレスを抱えやすい傾向にあります。そこで重要となるのが「ストレスマネジメント」です。
ストレスマネジメントとは、ストレスをうまくコントロールし、健康や生活の質を維持するための方法です。具体的な方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- リラクゼーション:深呼吸や瞑想、趣味への投資等でリラックスする時間を作る。
- エクササイズ:適度な運動でストレスを発散し、睡眠の質を改善する。
- 栄養バランス:体調を整えるために、バランス良い食事を取る。
- ソーシャルサポート:人間関係の充実、話し合いや助け合いを通じてストレスを軽減する。
これら全てが組み合わさって、初めて効果的なストレスマネジメントとなります。
不眠症が改善しない場合は適切な医療機関の受診を
自己判断で不眠症を放置すると、日常生活に支障をきたすだけでなく、精神的な健康も損なう可能性があります。そこで重要となるのが、適切な医療機関の利用です。睡眠障害専門の病院やクリニックでは、医師による詳細な診断のもと、個々の症状や生活背景に合った治療法を提案してもらえます。
医療機関を受診した方がよい場合
例えば、以下のような場合には、すぐに専門医の診察を受けることをおすすめします。
症状 | 具体例 |
---|---|
睡眠時間が不足 | 6時間未満が続く |
生活に影響 | 日中の眠気、集中力低下 |
身体的な不快感 | 呼吸停止、無呼吸 |
医師の指導のもと、睡眠障害を改善するための治療や生活習慣の見直しを進めていくことが、健康的な睡眠を取り戻す第一歩となります。
不眠症について相談できる医療機関
不眠症について相談できる医療機関は、主に以下の3つがあります。
医療機関 | 特徴 | |
1 | 心療内科 | ・心身の不調全般を扱う ・ストレス関連の不眠に対応 |
2 | 精神科 | ・うつ病などの精神疾患と不眠の関連を診断 ・薬物療法も行う |
3 | 睡眠専門外来 | ・睡眠時無呼吸症候群などの専門的診断 ・睡眠ポリグラフ検査などの精密検査が可能 |
心療内科や精神科では、不眠の原因となる心の問題やストレスについて相談できます。また、睡眠専門外来では、より専門的な検査や治療を受けられます。
いずれの医療機関を受診するにしても、まずはかかりつけ医に相談し、適切な医療機関を紹介してもらうのがよいでしょう。また、大学病院や総合病院の中にも睡眠専門外来を設けている場合があります。自分に合った医療機関を選び、早めの受診をおすすめします。
医療機関で受けられる治療
睡眠障害専門の医療機関では、患者一人ひとりの睡眠パターンや生活習慣に合わせた治療を提供します。具体的には、以下のような方法での治療を試みます。
- 薬物療法:睡眠を誘導する薬や、原因となるストレスや不安を軽減する薬を処方する。
- 認知行動療法:悪い睡眠習慣の改善やストレスマネジメントのための指導。
また、医師からの十分な説明や指導により、患者自身が自分の睡眠障害を理解し、生活習慣の改善やストレスへの対処方法を身につけることもできます。これにより、持続的な改善が期待できるでしょう。
まとめ
男性特有の不眠症は、仕事や生活のストレス、生活習慣の乱れ、ホルモンバランスの影響などが主な原因です。これらを解消するためには、まずは生活習慣を見直してみることから始めましょう。また、ストレスマネジメントによって、うまくストレスを発散させるのも大切です。
それでも改善しなければ、適切な医療機関を受診することをおすすめします。不眠症は、放置していると、日常生活に支障をきたすだけでなく、心身の健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。
不眠症に悩んでいるなら、軽視せず、早めに専門医に相談しましょう。
当サイトの監修医師について
当サイトは、医師資格を有する医師の監修のもと、サイト運営を行なっております。
大分大学医学部医学科卒業。医師として救急医療や在宅医療に従事し、マウスピース歯科矯正hanaravi(ハナラビ)を提供する株式会社DRIPSを創業。
医療現場で予防の重要性や予防に取り組んでもらうことの難しさを痛感。美容という切り口で本質的な予防につなげる入口として、口腔という臓器に興味を持つ。口腔環境が多くの臓器に影響を及ぼし、多くの病気に繋がってしまうというポイントから予防について新聞・テレビ・WEBメディア等で情報を発信している。