「女性に特有の不眠症の原因」:医師が解説する身体と心の要素

「最近、寝つきが悪い」
「途中で目がさめる」
「早朝に起きてしまう」
といったことはありませんか。

これらは全て不眠症の症状です。男女共に見られる症状ですが、特に女性に多い傾向があります。これは、女性特有の生理的な変化や社会からのプレッシャーなどが原因です。

不眠症に対する理解を深め、適切な対策によって改善を図りましょう。

リリモアクリニック内科歯科 院長 各務 康貴

監修医師

各務 康貴

大分大学医学部医学科卒業。医師として救急医療や在宅医療に従事し、マウスピース歯科矯正hanaravi(ハナラビ)を提供する株式会社DRIPSを創業。
医療現場で予防の重要性や予防に取り組んでもらうことの難しさを痛感。美容という切り口で本質的な予防につなげる入口として、口腔という臓器に興味を持つ。口腔環境が多くの臓器に影響を及ぼし、多くの病気に繋がってしまうというポイントから予防について新聞・テレビ・WEBメディア等で情報を発信している。

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目次

不眠症とは何か?

はじめに

不眠症とは、一般的には「十分な睡眠時間がとれていない状態」を指す言葉です。しかし、医学的には「一定期間以上、睡眠の質や量に問題があり、日中の活動に支障をきたす状態」を指します。

具体的な症状としては以下のようなものがあります。

  1. 眠りにつくのが困難
  2. 夜中に何度も目が覚めてしまう
  3. 早朝に目が覚めて二度と寝付けない
  4. 昼間に眠気を感じる

これらの症状が1ヶ月以上続く場合、不眠症と診断されます。また、これらの症状が生活に影響を及ぼしている場合も同様です。不眠症には種々の原因があり、それぞれに適した治療法が存在します。

ライフステージ別女性の不眠症の原因

身体的要素

女性特有の不眠症には生理周期やホルモンバランスの変化などの身体的要素が大きく影響します。ここでは、女性の不眠症を引き起こす身体的要素について解説します。

生理前はホルモンの変化でやたらと眠い

女性の生理周期と睡眠の質は密接に関連しています。その時期によって女性ホルモンの量が変化し、中には睡眠に大きく影響するものもあるためです。特に次のホルモンは、睡眠の質に大きく影響を与えます。

ホルモン影響
プロゲステロン生理前・生理中の分泌低下により睡眠障害を引き起こす
エストロゲン更年期障害やPMSによる心身の不調で睡眠を阻害

このうち、プロゲステロンは、体温を上げ、リラックス作用を持つことから「自然の睡眠薬」ともいわれています。生理前や生理中にはプロゲステロンの分泌が低下するため、これが睡眠の質を悪化させる原因となります。

また、PMS(月経前症候群)や更年期障害による心身の不調も、睡眠を阻害します。PMSは心理的な症状が強く出ることが多く、これが不眠を引き起こすことがあります。

これらの症状がある方は、専門の医療機関に相談し、改善するのが望ましいでしょう。

妊娠前期は眠い、後期は中途覚醒が多い

妊娠中の女性は、ホルモンバランスの変化や身体的な変化により、睡眠パターンが大きく影響を受けます。

時期症状と原因
妊娠前期(1〜3ヶ月)主にプロゲステロンの増加が原因で眠気が強くなりやすい。
特に日中に倦怠感や眠気を感じやすい。
妊娠後期(7〜9ヶ月)お腹の大きさによる体勢の不快感、胎動による睡眠の中断、頻尿などが原因で中途覚醒が増加する

妊娠中の睡眠の質と量の変化を表にまとめると以下のようになります。

妊娠時期睡眠の特徴主な原因
前期眠気が強いプロゲステロン増加
後期中途覚醒が多い身体的不快感、胎動、頻尿

これらの睡眠パターンの変化は正常な妊娠経過の一部ですが、極端な睡眠障害が続く場合は、産科医に相談することをおすすめします。適切な睡眠は、母体と胎児の健康維持に重要な役割を果たします。

出産後は体の変化と育児で眠れない

出産後の女性は、身体的な変化と育児の負担により、不眠に悩まされやすくなります。主な要因として、以下のようなものが挙げられます。

主な要因内容
ホルモンバランスの変化・出産後、急激に女性ホルモンが減少
・体内リズムの乱れを引き起こす
授乳による睡眠の中断・新生児の3~4時間おきの授乳
・夜間の頻繁な起床により、深い睡眠が得られにくい
育児ストレス・赤ちゃんの世話に対する不安や緊張
・慣れない育児による精神的疲労
身体の回復過程・出産による身体的な疲労
・傷の痛みや産後の不快感

これらの要因が複合的に作用し、以下のように十分な睡眠時間や質の確保が難しくなります。特に産後うつとの関連も指摘されており、適切な休息と周囲のサポートが重要です。

時期睡眠の特徴
産後1ヶ月睡眠時間の減少、頻繁な中断
産後3ヶ月睡眠リズムの乱れ、日中の眠気
産後6ヶ月徐々に改善、個人差が大きい

このような状況は一時的なものですが、長期化する場合は専門医への相談も検討しましょう。

更年期は眠りが浅い

閉経期に差し掛かると、女性ホルモンであるエストロゲンの減少が見られます。

エストロゲンは、睡眠の質を高める作用があるとされています。そのため、エストロゲンの減少は、睡眠時間の短縮だけでなく、眠りの浅さ、頻繁な覚醒といった不眠症の症状を引き起こします。特に、睡眠中に何度も覚醒することは、日々の生活に大きな影響を及ぼす可能性もあるでしょう。

閉経期に不眠症の症状が出た場合、適切な診断と治療が必要です。自己判断せず、専門の医療機関に相談しましょう。

不眠症の女性の割合

不眠症は女性に多い傾向があります。日本睡眠学会の調査によると、成人女性の約20%が不眠症状を抱えているとされています。これは男性の約15%と比べて高い割合です。
年代別に見ると、以下のような特徴があります。

年代女性の不眠症割合
20代約15%
30代約18%
40代約22%
50代約25%
60代以上約30%
参考:厚生労働科学研究成果データベース「健康日本21(第2次)に即した睡眠指針への改訂に資するための疫学研究」「一般成人における不眠症状と性差について」

このように、年齢が上がるにつれて不眠症の割合が増加する傾向にあります。特に更年期以降の女性は、ホルモンバランスの変化や身体的な不調により、睡眠の質が低下しやすくなります。

女性の不眠症を引き起こすその他の原因

社会的な要素

現代の女性にとって、社会的なストレスが不眠症の一因となる場合があります。ここでは、女性の不眠症を引き起こす社会的な要素について解説します。

人間関係や家庭でのストレス

女性は家庭、職場、地域など様々な場面で多くの役割を求められるため、ストレスが溜まり易く、それが不眠症を引き起こすことがあります。主な生活におけるストレス要素としては、以下のようなことが挙げられます。

ストレス要素
職場過大な業務量、人間関係、パフォーマンスプレッシャー
家庭家事の多さ、子育ての負担、パートナーとの関係
人間関係地域活動の担当、人間関係

例えば、職場ではプロフェッショナルとして高いパフォーマンスを求められ、家庭では家事や育児といった役割を果たすといった場合に、ストレスは増大するでしょう。加えて、女性は感情に敏感である傾向があるため、ストレスや心配事を抱え込みやすく、それが睡眠を妨げる原因となるのです。

このような日々の生活スタイルや役割からくるストレスは、睡眠を阻害し、不眠症を引き起こす可能性があります。特に、夜間にこれらの悩みを思い悩んでしまうことで、深い眠りが得られない場合があります。

身体的な不調

女性の不眠症を引き起こす身体的な不調には、さまざまな要因があります。主な原因として以下が挙げられます。

原因具体的な症状
ホルモンバランスの乱れ・生理前症候群(PMS)
・更年期障害
慢性的な痛み・生理痛
・頭痛
・腰痛
自律神経の乱れ・冷え性
・のぼせ
・寝汗

これらの身体的な不調は、睡眠の質を低下させ、不眠症を引き起こす可能性があります。例えば、ホルモンバランスの乱れは体温調節機能に影響を与え、寝つきを悪くすることがあります。また、慢性的な痛みは、眠りを浅くしたり、中途覚醒の原因となったりします。

他に、自律神経の乱れは、特に更年期の女性に多く見られ、寝汗やのぼせといった症状が睡眠を妨げることがあります。これらの身体的な不調は、ストレスや生活習慣の乱れとも密接に関連しているため、総合的なアプローチが必要です。

ライフスタイルの変化による睡眠リズムの乱れ

女性のライフスタイルの変化は、睡眠リズムに大きな影響を与えることがあります。特に以下のような変化が、不眠症の原因となる可能性があります。

  • 仕事の変化(就職、転職、昇進など)
  • 生活環境の変化(引っ越し、同居開始など)
  • 家族構成の変化(結婚、出産、子どもの独立など)

仕事における変化により、例えば残業が増えれば、就寝時間も遅くなり、睡眠時間が短くなる可能性があります。夜勤のある仕事であれば、昼夜が逆転してしまうでしょう。さらに、出産後の育児では睡眠時間はどうしても不規則になりがちです。このような睡眠リズムの乱れは、体内時計の狂いを引き起こし、不眠症につながる可能性があります。

ライフスタイルの変化に伴う睡眠リズムの乱れを防ぐには、規則正しい生活リズムを心がけ、就寝時間を一定に保つことが大切です。

睡眠環境の悪さ

良質な睡眠を得るためには、睡眠環境を適切に整えることが重要です。睡眠環境の悪さは、女性の不眠症の原因の一つとして挙げられます。具体的には以下のような要因と、注意することがあります。

睡眠環境注意事項
光環境・就寝時の部屋の明るさ
・早朝の日光の差し込み
温度・湿度・寝室の適切な温度:18〜23℃
・快適な湿度:40〜60%
音環境・外部からの騒音
・パートナーのいびき
寝具・マットレスの硬さや質
・枕の高さや形状

特に女性は男性に比べて環境の変化に敏感な傾向があります。例えば、女性は男性よりも体温調節が難しく、ホルモンバランスの変動が激しい分、その分泌に影響する光にはより配慮する必要があるでしょう。これらの要因を意識し、自分に合った睡眠環境を整えることで、不眠症の改善につながる可能性があります。

不眠症を改善するための対処法

睡眠障害を改善する対策

睡眠障害に悩む女性は主に次のことに取り組むことをおすすめします。

  • ライフスタイルの見直し
  • 食事や運動
  • 必要に応じた薬物治療の利用

それぞれについて詳しく解説します。

ライフスタイルの見直し

不眠症の改善には、ライフスタイルの見直しが必要不可欠です。主に以下のことを実践するとよいでしょう。

見直しポイント具体的な対策
睡眠スケジュール固定的な就寝時間と起床時間の設定
昼間の睡眠過度な昼寝の制限
飲食カフェインやアルコールの摂取制限
ブルーライト就寝前のデバイス使用を避ける

まずは、睡眠スケジュールを整えることから始めましょう。固定的な就寝時間と起床時間を設定することで、体内時計を整えることが可能です。

次に、昼間の過度な睡眠や昼寝も見直す必要があります。適度な昼寝はリフレッシュにつながりますが、長時間の昼寝は夜の睡眠を阻害します。

また、カフェインやアルコールの摂取も睡眠影響を及ぼします。特に就寝前の摂取は避け、代わりにノンカフェインのハーブティーなどがおすすめです。

最後に、スマートフォンやパソコンのブルーライトは睡眠を妨げる元です。就寝前のデバイス使用は極力避け、リラックスできる環境を整えましょう。

これらの見直しを行うことで、睡眠の質を向上させることが期待できます。

食事や運動の重要性

食事の質と運動は睡眠障害の改善に大きく影響します。

特に、女性の場合は生理周期による体調の変化をうまく管理するためにも、栄養バランスの良い食事が必要です。マグネシウムやビタミンB6など睡眠ホルモンの生成を助ける栄養素を摂取することが重要です。以下のような食材は特に積極的に摂るとよいでしょう。

食材効果
バナナマグネシウムとビタミンB6が含まれており、深い睡眠を促す。
アーモンドマグネシウムが豊富で、睡眠の質を改善する。
納豆ビタミンB6が多く含まれ、睡眠ホルモンの生成を助ける。

また、 適度な運動は、ストレス解消とリラクゼーションに効果的です。特に、ウォーキングやヨガなどの軽い運動は、心地よい疲労感を生み出し、深い睡眠を促します。ただし、就寝前の激しい運動は興奮状態を引き起こし、逆に睡眠を妨げる可能性もあるため注意が必要です。

睡眠障害の診断と病院

睡眠障害の診断と病院

睡眠障害は専門的な診断が必要です。そのためにも睡眠障害外来など、専門の医療機関を受診することををおすすめします。ここでは、睡眠障害外来の特徴と、そこでの診療について紹介します。

不眠症の悩みは睡眠障害外来へ

睡眠障害外来は、睡眠に関する問題を専門的に診療する部門です。

診療内容としては、以下の2点を挙げることができます。

  1. 専門的な検査:さまざまな睡眠障害の診断に必要な専門的な検査を行う。一晩泊まり込んで「睡眠ポリグラフ検査」を行うのが一般的。
  2. 専門の医師による診療:個々の症状や生活習慣に合わせた適切な治療を行う。


睡眠障害外来では、患者一人ひとりの状態に合った最善の治療を提供してもらえるでしょう。

医療機関を受診する判断基準

不眠症の症状が長期間続く場合、医療機関の受診を検討することが大切です。以下の基準を参考に、受診の必要性を判断してみましょう。

  1. 不眠の持続期間:1ヶ月以上続く場合は要注意。3ヶ月以上続く場合は受診を強く推奨
  2. 日中の生活への影響:仕事や学業に支障が出る、家事や育児に集中できない、気分の落ち込みや不安感が強くなる、など
  3. 自己対策の限界:睡眠環境の改善や生活習慣の見直しを試みても改善が見られない
  4. 身体症状の出現:慢性的な頭痛や偏頭痛、胃痛・消化不良などの胃腸障害、肩こりや腰痛などの筋肉の痛み
  5. 精神症状の悪化:不安感や抑うつ気分が強くなり、日常生活に支障をきたす

これらの基準に当てはまる場合は、専門医による適切な診断と治療を受けることをおすすめします。早めの対応が症状の改善につながります。

医療機関で受けられる治療

不眠症の症状が重い場合や、ライフスタイルの変更などによる自己治療が効果を示さない場合は、薬物治療の利用を検討することがあります。

一般的な不眠症治療薬としては、睡眠導入剤や睡眠持続剤があります。「ゾピクロン」や「エスゾピクロン」などの薬が一般的で、これらは短期間の使用が推奨されています。

また、不眠症が抑うつ症状や不安症状と結びついている場合は、抗うつ薬や抗不安薬の使用も考えられます。

ただし、薬物治療はあくまで一時的な対策であり、長期的な解決には生活習慣の見直しが必要となります。また、副作用の可能性もありますので、必ず医師の指導の下で行うことが重要です。

まとめ

女性の睡眠障害は、多くの場合、身体と心のバランスが崩れて起こります。そのバランスを整えるためには、適切なライフスタイルの見直し、食事や運動の重要性を理解し、必要に応じて薬物治療を利用することが大切です。

そして、自己判断で対処せず、専門の医師に診てもらうことも重要です。不眠症は一人で抱え込むものではないという認識を持ちましょう。

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大分大学医学部医学科卒業。医師として救急医療や在宅医療に従事し、マウスピース歯科矯正hanaravi(ハナラビ)を提供する株式会社DRIPSを創業。
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