睡眠障害(不眠症)の治し方|自分でできること、病院での治療法

睡眠障害とは、不眠症など睡眠に関する病の総称です。

放っておくと日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性もあるため、早期に改善を試みるのが望ましいでしょう。ライフスタイルの改善など自分でできることを試しても症状が続く場合は、専門医の診断、治療を受けることをおすすめします。

本記事では主に病院での診断方法や治療について紹介します。

リリモアクリニック内科歯科 院長 各務 康貴

監修医師

各務 康貴

大分大学医学部医学科卒業。医師として救急医療や在宅医療に従事し、マウスピース歯科矯正hanaravi(ハナラビ)を提供する株式会社DRIPSを創業。
医療現場で予防の重要性や予防に取り組んでもらうことの難しさを痛感。美容という切り口で本質的な予防につなげる入口として、口腔という臓器に興味を持つ。口腔環境が多くの臓器に影響を及ぼし、多くの病気に繋がってしまうというポイントから予防について新聞・テレビ・WEBメディア等で情報を発信している。

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目次

睡眠障害とは?不眠症と症状

睡眠障害の種類と症状

睡眠障害の代表的な症状である不眠症について、その定義と主な症状をご紹介します。

不眠症とは、十分な睡眠時間と環境があるにもかかわらず、以下のような症状が1ヶ月以上続く状態を指します。

  • 寝つきが悪い(入眠障害)
  • 夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)
  • 朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)
  • 熟睡感が得られない(熟眠障害)

これらの症状により、日中の眠気や疲労感、集中力の低下などが起こり、日常生活に支障をきたすことがあります

不眠症とは

不眠症とは、一晩に十分な時間を確保しても眠りが浅い、眠れない、途中で何度も目が覚めるなど、質の良い睡眠が得られない状態を指します。一時的なものから長期にわたるものまで様々で、原因もストレスや生活習慣の乱れ、体調不良など多岐にわたります。

不眠症の主な症状

具体的な症状は以下の表にまとめました。

不眠症の主な症状
1. 眠りに入るのに時間がかかる
2. 眠っても途中で目が覚める
3. 早朝に目が覚めてしまい再び眠れない
4. 日中に疲労感や集中力の低下を感じる

これらの症状が続く場合、病院での診察を受けることをおすすめします。不眠症は身体だけでなく精神にも影響を及ぼすため、早期の対処が必要です。

病院における睡眠障害の診断方法

睡眠障害の診断方法:不眠症

不眠症の診断は主に2つの方法で行われます。まず、医師が患者の睡眠状態や生活習慣について詳しく聞く問診が行われます。この際、患者は自身の睡眠パターンや日常生活の様子を正確に伝えることが重要です。

また、問診だけではなく、いわゆる「睡眠日記」が活用されることもあります。これは患者が一定期間、自分の睡眠状態を詳細に記録するもので、就寝時間、起床時間、夜間の覚醒回数などを記録します。

以下に問診と睡眠日記の利用例を表に示します。

方法内容
問診患者の生活習慣、睡眠時間、覚醒回数などを聞き取る
睡眠日記就寝時間、起床時間、夜間覚醒回数など睡眠状態を詳細に記録

これらの方法を通じて、医師は患者の睡眠障害の程度を正確に把握し、適切な治療方針を立てることが可能となります。

問診による診断

問診は、不眠症の初期診断における重要な一手段です。 医師はまず、患者の睡眠状況や日常生活のリズム、精神状態などを詳細に聞き出します。これにより、睡眠障害の原因や種類を初めて理解し、適切な治療法を決定する基礎を作ります。

具体的な問診内容は次の通りです:

  1. 睡眠時間や就寝前の状況
  2. 昼間の眠気の程度
  3. 睡眠を妨げる可能性のある生活習慣や環境
  4. ストレスや精神的な問題
  5. 過去の病歴や現在の健康状態

問診は、医師と患者が一緒になって睡眠障害の問題を明らかにし、治療に向けた一歩を踏みだすきっかけとなります。

睡眠日記による診断

睡眠障害の診断方法の1つとして、医師はしばしば「睡眠日記」の作成を患者に勧めます。これは、日々の睡眠状況を詳細に記録することで、そのパターンや習慣を理解し、問題の根源を特定するための有効なツールです。

具体的には、就寝時間、起床時間、夜間の覚醒回数、昼間の眠気の度合いなどを毎日記録します。また、飲酒やカフェインの摂取、運動量、ストレスレベルなど、睡眠に影響を及ぼす可能性のある要因も追記します。

表1: 睡眠日記のサンプル

日付就寝時間起床時間覚醒回数昼間の眠気飲酒量運動量ストレスレベル
8/123:007:002回なし1杯適度高い

このように具体的な日々の記録を元に、医師は患者の睡眠の質や生活習慣の改善点を判断し、最適な治療法を提案することができます。

病院での睡眠障害の治療方法

睡眠障害を診察する医師の役割

睡眠障害の治療方法は大きく3つに分けられます。

1つ目は、「薬物治療」です。医師の指導のもと、体質や症状に合わせて選ばれる薬物を服用します。一時的な改善を目指しますが、長期間の服用は依存症を引き起こす可能性があります。

次に、「CBT(認知行動療法)」です。これは、睡眠障害の原因となる思考パターンや行動を改善し、自然な睡眠を促す方法です。個々の生活習慣や症状に応じた対策を練ります。

最後に、「ライフスタイルの見直し」です。食事や運動、寝る前の行動など日常生活の中で改善可能な要素を整え、質の良い睡眠を得られるようサポートします。

これら3つは一例で、具体的な治療方法は患者さん一人ひとりの症状や生活状況により異なるため、専門的な診断と指導が必要です。

薬物治療

睡眠障害の1つである不眠症の治療法として、薬物治療があります。主に、睡眠を誘導する薬や、睡眠の質を改善する薬が用いられます。

【薬物治療で用いられる薬】

  • GABA受容体作動薬
  • メラトニン受容体作動薬
  • オレキシン受容体拮抗薬

GABA受容体作動薬

GABA受容体作動薬は、睡眠障害の治療によく用いられる薬剤の一つです。GABAとは、脳内で抑制性の神経伝達物質として働く物質で、これを活性化することで睡眠を促進します。
主なGABA受容体作動薬には以下のようなものがあります。

種類特徴主な副作用
ベンゾジアゼピン系作用時間が長い持ち越し効果、依存性
非ベンゾジアゼピン系作用時間が短いめまい、頭痛

GABA受容体作動薬は即効性があり、不眠症状をすぐに改善できる利点がありますが、長期使用による依存性や耐性の形成に注意が必要です。そのため、医師の指示に従って適切に使用することが重要です。また、急な中止は離脱症状を引き起こす可能性があるため、徐々に減量していく必要があります。

メラトニン受容体作動薬

メラトニン受容体作動薬は、体内時計の調整に関与するホルモン「メラトニン」の働きを模倣する薬剤です。この薬は主に以下の特徴を持ちます。

  • 睡眠・覚醒リズムを整える効果がある
  • 睡眠薬と比べて依存性が低い
  • 翌朝の眠気が少ない

メラトニン受容体作動薬の代表的な薬剤と特徴は以下の通りです。

薬剤名主な特徴
ラメルテオン・睡眠潜時(寝つくまでの時間)を短縮
・高齢者にも使いやすい
アゴメラチン・うつ症状も改善する可能性がある
・欧州では承認されているが日本では未承認

これらの薬剤は、通常の睡眠薬と異なり、脳の自然な睡眠メカニズムに働きかけるため、より生理的な睡眠をサポートします。ただし、効果の個人差が大きいため、医師と相談しながら適切な用法・用量を決定することが重要です。
また、メラトニン受容体作動薬は、時差ぼけの改善にも効果があるとされています。海外旅行の際など、必要に応じて医師に相談してみるのもよいでしょう。

オレキシン受容体拮抗薬

近年、睡眠障害の治療に新たな選択肢として登場したのが、オレキシン受容体拮抗薬です。この薬は、脳内の覚醒システムに関与するオレキシンの働きを抑制することで、自然な眠りを促進します。この薬の主な特徴は以下の通りです。

  • 睡眠の質を改善
  • 翌日の眠気が少ない
  • 依存性が低い

従来の睡眠薬と比較すると、以下のような違いがあります。

特徴オレキシン受容体拮抗薬従来の睡眠薬
作用機序覚醒システムを抑制睡眠システムを促進
持ち越し効果少ない比較的多い
依存性低い比較的高い

ただし、オレキシン受容体拮抗薬にも副作用があり、めまいや頭痛などが報告されています。また、ナルコレプシーの患者さんには使用できないなど、適応には注意が必要です。
使用する際は必ず医師の指示に従い、適切な用法・用量を守ることが重要です。睡眠障害でお悩みの方は、専門医に相談し、自分に合った治療法を見つけることをおすすめします。

CBT(認知行動療法)

CBT(認知行動療法)は、睡眠障害の治療方法の一つです。睡眠に関する思考や行動パターンを改善し、質の良い睡眠を取り戻すのが目標です。

この療法では、まず患者の思考パターンや行動を評価します。次に、それが睡眠にどのように影響しているのかを理解し、改善のために必要なステップを計画します。

具体的な治療手法としては、「スリープハイジーン」の指導や、不適切な睡眠習慣の改善、ベッドでの活動の制限などです。また、ストレス管理やリラクゼーション技術の指導も行います。

このようにCBTは、患者自身が自分の睡眠をコントロールする力を身につけることをサポートする治療法です。

ライフスタイルの見直し

ライフスタイルの見直しは、睡眠障害治療において欠かせません。日々の生活習慣を改善することで、自然な睡眠リズムを取り戻すことが期待できます。

  1. 定時就寝・起床:体内時計を整えるために、毎日同じ時間に就寝・起床することを推奨します。
  2. カフェイン摂取の制限:コーヒーや紅茶などのカフェイン摂取は、特に寝る前数時間は控えめてください。
  3. 適度な運動:日中の適度な運動は睡眠の質を高めます。ただし、寝る前の激しい運動は避けましょう。

このように、ライフスタイルの見直しは医薬品治療や認知行動療法などと併用することで、より効果を発揮します。

睡眠薬による治療の注意点

はじめに

睡眠薬を用いた治療は効果的ですが、いくつかの注意点があります。

副作用があるので医師の指導に従うこと

睡眠薬による治療を受ける際は、副作用に注意が必要です。医師の指導に従うことが重要ですが、以下のような副作用が起こる可能性があります。

  • 眠気や倦怠感:日中の活動に支障をきたす可能性がある。
  • ふらつきや転倒:特に高齢者は注意が必要。
  • 依存性:長期使用により薬への依存が生じる可能性がある。
  • 記憶障害:一時的に記憶力が低下することがある。
  • 悪夢や金縛り:怖い夢をみたり、意識ははっきりしているが身体が動かなかったりなどといった一時的な睡眠麻痺が生じることがある。

これらの副作用は、薬の種類や個人の体質によって異なります。以下の表は、主な睡眠薬の種類と副作用の傾向をまとめたものです。

睡眠薬の種類主な副作用
ベンゾジアゼピン系依存性、筋弛緩作用
非ベンゾジアゼピン系依存性(比較的低い)、めまい
メラトニン受容体作動薬頭痛、めまい
オレキシン受容体拮抗薬眠気、頭痛、悪夢や金縛り

副作用が気になる場合は、必ず医師に相談しましょう。薬の種類や用量の調整、あるいは他の治療法への変更を検討することができます。自己判断で服用を中止したり、用量を変更したりすることは避けてください。

妊娠時の服用は医師に要相談

妊娠中の睡眠障害で悩む方も多いですが、睡眠薬の服用については特に慎重な対応が必要です。妊娠中の薬物使用は胎児への影響が懸念されるため、必ず医師に相談しましょう。
以下のポイントに注意が必要です。

  • 妊娠初期(特に妊娠8週まで)は薬物の使用を避けることが望ましい
  • 妊娠中期・後期でも、可能な限り薬物療法以外の方法を検討する
  • やむを得ず薬物療法を行う場合は、胎児への影響が最小限の薬剤を選択する

医師は妊娠週数や症状の程度を考慮し、以下のような対応を検討します。

対応内容
非薬物療法認知行動療法、リラクゼーション法など
安全性の高い薬剤抗ヒスタミン薬など、比較的安全とされる薬剤の使用
最小有効量必要最小限の用量での処方

妊娠中の不眠は母体と胎児の健康に影響を与える可能性があるため、一人で悩まず専門医に相談することが大切です。医師の指導のもと、安全で効果的な治療法を見つけていきましょう。

まとめ

本記事を通じて、睡眠障害の種類やそれぞれの診断方法、治療法についての理解を深めていただけたことと思います。睡眠障害は日常生活に大きな影響を及ぼすため、自身の症状が何に起因するのかを知り、適切な医療機関への受診が重要です。

役割
睡眠医学の専門家専門的な診断・治療を行う
心療内科医・精神科医心理的側面からのアプローチを行う

睡眠障害は、薬物治療だけでなく、心理療法やライフスタイルの見直しも重要な治療手段です。自身の症状に合わせた治療を受けることで、より質の良い睡眠を取り戻すことが可能です。

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大分大学医学部医学科卒業。医師として救急医療や在宅医療に従事し、マウスピース歯科矯正hanaravi(ハナラビ)を提供する株式会社DRIPSを創業。
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