避妊を失敗した可能性がある場合、女性は不安でたまらないものです。
しかし、大切なのは落ち着いて行動すること。一定時間内であれば、アフターピルの服用によって妊娠を阻止できる可能性があります。産婦人科を受診し、医師の指示に従って服用しましょう。
本記事では、避妊に失敗した際の対処法を紹介します。ぜひ参考のうえ、行動してください。
1. はじめに:避妊失敗に気づいたらまず落ち着いて
「避妊に失敗したかもしれない」と気づいた時、正しい判断をするためにも、まずは落ち着いて行動することが大切です。深呼吸をして冷静さを取り戻しましょう。そして、できればパートナーといっしょに以下のことを確認してください。
- どんな避妊方法で、どのように失敗したのか?
- 自分はどうしたいのか?
女性と男性では、妊娠するのが自分の身体であるかどうかという大きな違いがあることもあり、パートナーと話しても意見が割れることがあります。そのため、パートナーの意見も大切ですが、自分はどうしたいのかをよく考えることが正しい判断を下すためには重要です。
2. 妊娠の可能性がある避妊失敗ケース
よくある避妊失敗のケースとしては、次の6つが挙げられます。
2.1 コンドームの破損・ズレ
コンドームは正しく使用すれば避妊効果の高い方法ですが、破損やズレによって避妊を失敗してしまうケースもあります。
ケース | 説明 |
---|---|
破損 | 性行為中にコンドームが破れてしまう。原因としては爪などで傷をつけていたり、サイズが合っていなかったりすることのほか、使用期限切れなどが挙げられる。 |
ズレ | 性行為中または射精後にコンドームがペニスからずれる。サイズが合っていない、挿入時に空気が入り込んでいるなどが原因。 |
コンドームの破損やズレが起こった場合、精液が膣内または外陰部に付着することで妊娠する可能性があります。少しでも違和感を感じたら、すぐに性行為を中断し、コンドームの状態を確認してください。
また、コンドームの破損・ズレを未然に防ぐためにも、以下の点に注意しましょう。
- 適切なサイズのものを使用する
- 使用期限内をチェックする
- 開封時は爪などで傷つけないよう注意する
- 装着時に先端を軽くつまんで空気を抜き、密着させる
- 射精後はペニスの根元を押さえながらゆっくりと抜き取る
2.2 一瞬でも一部でも生で性行為をしてしまった
膣外射精は確実な避妊法ではありません。たとえ短時間であっても、性行為中にコンドームを装着していなかった時間があれば、妊娠の可能性はあります。
精子は運動性が高いため、射精をしたのが膣内でも膣外でも、ごく少量の精液であっても、妊娠に至る可能性があります。
一瞬でも性器が接触した場合や、外陰部に精液が付着した場合も、妊娠の可能性はゼロとはいえないのです。
2.3 ピルの飲み忘れ・遅れ
低用量ピルは毎日決まった時間に服用することで高い避妊効果を発揮しますが、飲み忘れや服用時間の遅れがあると、避妊効果が低下する可能性があります。ピルの種類によって服用方法や飲み忘れ時の対応が異なるため、婦人科で処方された際の指示を必ず守りましょう。
ピルの種類 | 具体例 | 飲み忘れ時の対応 |
1相性ピル | プラノバールなど | ・12時間以内に気づいた場合:すぐに1錠服用。次の錠剤は通常通り服用。 ・12時間以上経過後に気づいた場合:直前に飲むべきだった錠剤を1錠服用。飲み忘れた錠剤は服用せず、次の錠剤から通常通り服用を再開。 |
2相性・3相性ピル | トリキュラーなど | ・12時間以内に気づいた場合:すぐに服用。次の錠剤は通常通り服用。 ・12時間以上経過後に気づいた場合:ピルの種類や飲み忘れた時期によって対応が異なるため、説明書や医師の指示に従う。 |
飲み忘れが続く、または適切な対処法がわからない場合は、自己判断せずに婦人科医に相談しましょう。
2.4 外に出した精液が外陰部付着
外出し(膣外射精)は避妊法として確実性が非常に低く、次のような理由から妊娠の可能性があります。
- 射精前の分泌液にも精子が含まれている可能性がある:射精前に分泌される尿道球腺液にも少量の精子が含まれている場合があり、膣内への挿入中に分泌液が付着すれば妊娠の可能性がある。
- 外陰部から膣への精子の移動:精子は運動性が高いため、外陰部に付着した場合でも膣内へ移動し、受精に至る可能性がある。
- 射精のコントロールの難しさ:射精のタイミングを完全にコントロールすることは難しく、意図せず膣内へ射精してしまうリスクがある。
外出しは避妊法としては適切とはいえないため、他の避妊方法を選択することを強く推奨します。
2.5 排卵日付近の性行為
妊娠の可能性を高める要素として、排卵日付近での性行為が挙げられます。女性の体は、生理周期の中でも特に排卵が起こる時期に妊娠しやすくなります。
排卵日は、生理開始日を1日目とすると、14日目前後とされています。ただし、生理周期には個人差があり、28日周期ではない場合は、その時期が前後します。正確な排卵日の特定は簡単にはできません。
次の表は、25日周期、28日周期、31日周期の方の排卵日の目安を示したものです。
生理周期 | 排卵日の目安 |
---|---|
25日周期 | 生理開始日から11日前後 |
28日周期 | 生理開始日から14日前後 |
31日周期 | 生理開始日から17日前後 |
また、排卵日だけでなく、排卵日の数日前から性行為を行うと妊娠する可能性があります。精子は女性の体内で数日間生存できるからです。
また、排卵日を予測する方法はいくつかあります。例としては以下のような方法が挙げれらます。
- 基礎体温を毎日測定し、体温の変化から排卵日を推測する
- 排卵日予測検査薬を使用する
- アプリなどを活用する
しかし、これらの方法も正確ではありません。排卵日前後の性行為は妊娠の可能性が高いことを理解し、避妊を徹底することが重要です。
2.6 その他の避妊方法の失敗
コンドームやピル以外にも様々な避妊方法がありますが、それらも100%確実な避妊を保証するものではありません。それぞれの避妊方法における失敗の可能性と、その理由は以下のとおりです。
避妊方法 | 失敗の可能性 | 主な失敗原因 |
---|---|---|
オギノ式 | 高い | 排卵日の予測の難しさ、精子の生存期間の長さ |
基礎体温法 | 高い | 体調変化による基礎体温の変動、排卵日の特定の難しさ |
子宮内避妊器具(IUD) | 低い | 装着の失敗、脱落 |
殺精子剤 | 高い | 使用方法の誤り、効果時間 |
避妊リング | 低い | 脱落 |
皮下インプラント | 非常に低い | ー |
オギノ式や基礎体温法は、女性の体のリズムに基づいて避妊する方法ですが、排卵日を正確に予測することは難しく、避妊失敗のリスクが高い方法です。IUDや避妊リング、皮下インプラントといった器具を用いる方法は比較的確実性が高いですが、正しく装着されていない場合や脱落した場合には避妊効果が得られません。殺精子剤は、使用方法を誤ったり、効果時間を過ぎた場合には避妊効果が期待できません。
3. 避妊失敗時の対処法
避妊を失敗してしまったことに気がついたら、落ち着いて次のように対処しましょう。
3.1 120時間以内:アフターピル(緊急避妊薬)の服用を検討
避妊に失敗したかも…と思ったら、まず落ち着いて行動することが大切です。性行為から120時間以内であれば、アフターピル(緊急避妊薬)の服用で妊娠を阻止できる可能性があります。アフターピルは、排卵を遅らせることで、妊娠を防ぐ効果が期待できる緊急避妊薬です。主なものとしては以下の2種類があります。
薬の種類 | 効果 | 入手方法 |
---|---|---|
レボノルゲストレル配合錠 | 72時間以内 | 医師による処方が必要。 |
ウリプリスタル酢酸錠 | 120時間以内 | 医師による処方が必要。用意している医院や薬局がかなり限定的(オンライン診療では比較的取り扱いあり) |
アフターピルは、医療機関を受診して処方箋をもらうことで入手できます。一部の医療機関ではオンライン診療にも対応しています。服用については、医師や薬剤師の指示に従ってください。副作用として、吐き気や不正出血などが起こる可能性もあるため、注意が必要です。
– 3.1.1 焦って効果の低い薬(ヤッぺ法、72時間用アフターピル)を服用するより落ち着いて効果のあるお薬(120時間用アフターピル)を選ぶ
緊急避妊薬には種類があり、それぞれ服用可能な時間や効果に違いがあります。確実な効果を得るためにも、落ち着いて適切な薬を選ぶことが重要です。主な緊急避妊薬の種類と服用可能時間、期待できる効果、入手方法は以下のとおりです。
緊急避妊薬の種類 | 服用可能時間 | 効果 | 入手方法 |
---|---|---|---|
72時間以内服用タイプ(ノルレボ錠) | 性交後72時間以内 | 120時間以内服用タイプよりは低い | 病院での診察が必要 |
120時間以内服用タイプ(エラワン錠) | 性交後120時間以内 | 高い | オンライン診療後、郵送または薬局受取 |
72時間以内に服用する緊急避妊薬は、120時間以内に服用できる緊急避妊薬と比べて効果が低いため、なるべく120時間以内に服用できる緊急避妊薬を選択しましょう。
また、ヤッぺ法という中用量ピルを複数回服用する方法もありますが、性行為後24時間以内の服用で77%、48時間以内で36%、72時間以内で31%と効果が高いとはいえません。さらに、吐き気や不正出血などの副作用が強く出る可能性もあり、有効性、安全面においてアフターピルよりも劣るといえます。
– 3.1.2 アフターピルの服用方法と注意点・副作用
アフターピルは、性行為後なるべく早く服用することが重要です。服用方法は薬の種類によって異なりますが、いずれも性交後できるだけ速やかに1回1錠を経口服用します。
薬の種類 | 有効時間 |
---|---|
ノルレボ錠 | 72時間以内 |
エラワン錠 | 120時間以内 |
緊急避妊薬にはいくつかの副作用があります。主な副作用としては吐き気、嘔吐、不正出血、生理不順、頭痛、腹痛、乳房の張りなどが挙げられます。過去には強い副作用が懸念されていましたが、現在処方されている緊急避妊薬は改良されており、以前と比べて副作用は少なくなっています。また、72時間有効なノルレボ錠と120時間有効なエラワン錠の間で、副作用の頻度や強さに大きな差はありません。
服用後3時間以内に嘔吐した場合は、薬が十分に吸収されていない可能性があるため、医療機関に相談し、再服用が必要かどうか確認しましょう。副作用は通常一過性で、数日で消失しますが、症状が重い場合や不安な場合は、医療機関を受診することが大切です。
– 3.1.3 アフターピルは万能ではないことを理解する
アフターピルを服用したからといって、必ず妊娠を防げるわけではありません。その効果は服用するタイミングに大きく左右され、性行為から時間が経つほど低下します。できる限り早く服用するほど高い効果が期待できますが、それでも100%の保証はありません。
時間経過 | レボノルゲストレルの妊娠阻止率 | ウリプリスタル酢酸エステルの妊娠阻止率 |
---|---|---|
24時間以内 | 約95% | 約99% |
72時間以内 | 約85% | 約98% |
120時間以内 | 服用不可 | 約98% |
また、アフターピルを服用したからといって、性感染症から身を守れるわけではないことにも注意しましょう。性感染症の予防にはコンドームの使用が不可欠です。
アフターピルはあくまで緊急時の手段であり、多用することは推奨されていません。女性の身体への負担も考慮し、普段から適切な避妊を心がけましょう。もし服用後に生理が来なかったり、いつもと違う症状が出た場合は、速やかに医療機関を受診してください。
3.2 120時間以降:妊娠検査薬で確認、医療機関へ相談
万が一、性行為から120時間以上経過してしまった場合は、アフターピルを服用しても効果は期待できません。適切なタイミングで妊娠検査薬を使用し、医療機関へ相談しましょう。
– 3.2.1 妊娠検査薬の使い方と時期
アフターピル服用後、または避妊失敗から120時間以上経過している場合は、妊娠検査薬の使用を検討しましょう。妊娠検査薬は、尿中のhCGホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を検出することで妊娠の有無を確認するものです。
下表のように、生理予定日当日では精度が低いため、1週間後を目安に検査するのが望ましいです。ただし、性行為の時期によってはさらに時間がかかる場合もあります。
検査時期 | 精度 |
---|---|
生理予定日当日 | 約50% |
生理予定日の1週間後 | 約99% |
また、妊娠検査薬を使用する際は、以下の点に注意してください。
- 使用前に必ず添付文書をよく読む
- できれば朝一番の尿で検査する
- 陽性だった場合は、速やかに医療機関を受診する
- 陰性でも、生理が来ない、またはいつもと違う症状がある場合は、再度検査をするか、医療機関で相談する
妊娠検査薬は薬局で購入できます。種類もいくつかありますので、薬剤師に相談して自分に合ったものを選ぶと良いでしょう。
– 3.2.2 婦人科受診を考えましょう
アフターピルの服用が間に合わなかった場合はもちろん、服用後であっても不安な場合は婦人科を受診しましょう。医師に相談することで、次のようなメリットが期待できます。避妊失敗後の対応に迷ったり、不安を感じたりする場合は、一人で抱え込まずに、まずは婦人科に相談してみましょう。
受診のメリット | 説明 |
---|---|
妊娠の有無を確認 | 正確な妊娠検査で、早期に妊娠の有無を確認できる |
生理周期の確認・調整 | 避妊失敗は生理周期に影響を与える可能性もある。医師に相談することで、生理周期を整えたり、今後の避妊計画を立てたりするのに役立つ。 |
性性感染症(STD)の検査・治療 | STDの検査や治療によって性感染症の早期発見・治療ができる。 |
将来の妊娠への影響 | 適切なケアを受けることで、将来の妊娠への影響を抑えられる。 |
精神的なサポート | 避妊失敗による不安や悩みを軽減し、精神的なサポートを受けることができる。 |
– 3.2.3 望まない妊娠だった場合の選択肢
望まない妊娠だった場合、中絶手術を受けるという選択肢もあります。
ご自身の人生を左右する重大な判断でもあるため、パートナーや信頼できる人に相談し、十分に考えて決断することが大切です。産んだ場合、中絶した場合、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、最良の選択をしましょう。
また、中絶手術には、母体保護法に基づいた条件があります。手術を受ける時期や費用なども医療機関によって異なりますので、医師に相談しましょう。
産む、産まない、どちらを選択するとしても、身体的・精神的な負担があります。一人で抱え込まず、信頼できる人に相談したり、専門機関のサポートを受けたりしながら、ご自身が納得できる結論を出してください。
4. 避妊失敗を防ぐために
何より避妊を失敗しないことが大切です。失敗を防ぐためにも、次のことを実践しましょう。
4.1 正しい避妊方法の理解と実践
避妊の失敗は、身体的にも精神的にも大きな負担となる可能性があります。そうならないためにも、正しい知識を身につけ、日頃から適切な行動を心がけることが重要です。
避妊には様々な方法があり、それぞれに特徴や効果、失敗率が異なります。ご自身に合った方法を選び、正しく実践することが大切です。
避妊方法 | 特徴 | 失敗率 |
---|---|---|
低用量ピル | 服用することで排卵を抑制 | 0.3% |
コンドーム | 性行為時に装着 | 2~15% |
子宮内避妊器具(IUD) | 子宮内に器具を挿入 | 0.2~0.8% |
4.2 パートナーとのコミュニケーション
避妊はパートナーと協力して行うものです。お互いの希望や不安を共有し、どのような避妊方法を選択するか、よく話し合うことが大切です。
4.3 定期的な婦人科検診
婦人科検診は、自身の身体の状態を把握し、早期に問題を発見するために重要です。定期的に受診することで、より安心して性生活を送ることができます。
5. まとめ:落ち着いて行動し、正しい知識を身につけて
避妊の失敗は、誰にでも起こりうるものです。大切なのは、落ち着いて行動し、正しい知識に基づいて対処することです。
万が一、失敗したかもしれないと思ったら、性行為から120時間以内であれば、アフターピル(緊急避妊薬)の服用を検討できます。早めに産婦人科を受診し、医師にアフターピルを処方してもらいましょう。
また、正しい避妊方法を知り、普段から実践することも大切です。万が一失敗した場合に適切に対処するためにも、正しい知識を身につけておくようにしましょう。