アフターピルは緊急避妊薬と呼ばれるものであり、72時間以内に服用することで望まない妊娠を防げます。人によっては副作用が現れる可能性もあるため専門家の指示の元、正しい方法で使用することが大切です。
アフターピルの正しい服用方法や注意点について専門医が解説します。
1. はじめに:アフターピルの役割と緊急避妊について
アフターピルは、避妊をせずに性交渉を行ったり、避妊に失敗したりした場合に妊娠を回避するために用いる緊急避妊薬です。
性交渉後72時間以内(ウリプリスタル酢酸エステル配合製剤は120時間以内)に服用することで、排卵を抑制したり遅らせたりすることで望まない妊娠を回避できます。
ただし、あくまで緊急避妊薬であり、通常の避妊方法として継続的に使用することは想定されていません。
また、アフターピルはに大きく分けて下記の2つの種類があります。
ピルの種類 | 主成分 | 主な名前 | 入手方法 |
---|---|---|---|
72時間用 | レボノルゲストレル | マドンナ、ノルレボなど | オンライン診療または産婦人科を受診 |
120時間用 | ウリプリスタル酢酸エステル | ウリプタル、ホセイ、エラ、エラワンなど | オンライン診療での取り扱いが豊富 |
それぞれ入手方法や服用のタイミング、効果が違います。緊急時には迅速な対応が必要となるため、特に入手方法は事前に把握しておきましょう。取り扱いがないクリニックもあるため、事前に確認してから受診することが大切です。
2. アフターピルの種類と特徴
アフターピルは主成分によって「レボノルゲストレル配合製剤」と「ウリプリスタル酢酸エステル配合製剤」の大きく2種類に分けられます。ここではそれぞれの特徴について詳しく解説します。
レボノルゲストレル配合製剤(マドンナ、ノルレボ錠など)
レボノルゲストレルは黄体ホルモンであり、この緊急避妊の効果が高く、安全性にも優れた製剤です。WHOからも緊急避妊薬として認定されています。
この製剤の特徴を以下にまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
作用の仕方 | 排卵を遅らせることで、精子と卵子が出会うのを防ぐ。すでに排卵が起こっている場合は効果なし。 |
服用タイミング | 性行為後72時間以内に、できるだけ早く服用。72時間を超えると効果が期待できなくなる。 |
妊娠阻止率 | 81%(性交後72時間以内、1回2錠服用)。時間が遅くなれば避妊成功率が下がる。 |
入手方法 | 医療機関を受診して処方してもらう。薬局で購入はできない。オンライン診療も利用可能。 |
価格 | 1万円前後+診察料(オンライン診療では無料のことも) |
レボノルゲストレル配合製剤は、あくまで緊急時の避妊薬です。日常的な避妊には、低用量ピルやコンドームなどの他の避妊法と併用することが推奨されます。緊急避妊が必要になった場合は、速やかに医療機関を受診し、医師の指示に従って服用してください。
ウリプリスタル酢酸エステル配合製剤(ウリプタル、ホセイ、エラ、エラワンなど)
ウリプリスタル酢酸エステル配合製剤は、日本で承認されている緊急避妊薬の一つです。黄体ホルモンに影響を与えることで排卵を抑制または遅延させることで、避妊効果を発揮します。
項目 | 内容 |
---|---|
作用の仕方 | 黄体ホルモンに影響を与え、排卵を抑制または遅延させる |
服用タイミング | 性行為後120時間以内のできるだけ早いタイミング |
妊娠阻止率 | 約98%(120時間以内に服用) |
入手方法 | 医療機関を受診し、医師の処方箋が必要。 |
価格 | 1万5000円前後+診察料(オンライン診療では無料のことも) |
服用のタイミングは性行為後120時間以内です。レボノルゲストレル配合製剤よりも効果が期待できる時間が長いため、性行為から時間が経過している場合に適しています。ただし、72時間を超えると効果が低減していくため、できるだけ早く服用することが重要です。
入手には、医療機関を受診し医師の診察を受けた上で処方箋を発行してもらう必要があります。薬局で購入することはできません。
緊急避妊薬はあくまで緊急時に使用するものであり、通常の避妊法として使用することは推奨されていません。日頃から適切な避妊を行うことが大切です。
3. アフターピルの正しい飲み方
アフターピルは正しく服用しなければ、十分な効果は期待できません。ここでは基本的な服用方法を紹介します。きちんと避妊するためにも参考にしてください。
服用タイミングの重要性:性行為後72時間以内(ウリプリスタル酢酸エステル配合製剤は120時間以内)
アフターピルの服用で最も重要なのは、性行為後できるだけ早く服用することです。アフターピルは、排卵を遅らせる、または抑制することで避妊効果を発揮します。時間の経過とともに排卵が進むため、服用が遅れるほど効果が低くなる可能性があります。
種類ごとのアフターピルの有効服用時間は以下のとおりです。
製剤の種類 | 有効服用時間 |
---|---|
レボノルゲストレル配合製剤 | 72時間以内 |
ウリプリスタル酢酸エステル配合製剤 | 120時間以内 |
レボノルゲストレル配合製剤の有効服用時間は、性行為後72時間以内、ウリプリスタル酢酸エステル配合製剤は120時間以内です。いずれの薬剤も、たとえ時間の猶予があったとしても、できるだけ早く服用する必要があります。
緊急避妊が必要な状況に陥ってしまったら、速やかに産婦人科を受診するか、薬局で薬剤を購入しましょう。入手方法は後ほど詳しく解説します。
時間との勝負ですので、迅速に対応してください。
1回1錠を水で服用
アフターピルは、基本的に水で服用します。先に紹介した通り、有効服用時間がピルの種類によって違いがあるほか、服用錠数も少々異なります。以下の表に各薬剤の錠数と服用方法についてまとめました。
製剤名 | 錠数 | 服用方法 |
---|---|---|
レボノルゲストレル配合製剤 | 1~2錠(薬の種類による) | 性行為後72時間以内に1回1~2錠を服用。 |
ウリプリスタル酢酸エステル配合製剤 | 1錠 | 性行為後120時間以内に1回1錠を服用。 |
万が一、錠数を誤って飲んでしまった場合は、すぐに医療機関に連絡し指示を仰いでください。
吐き気が出やすい方向けの対策:食後や寝る前に服用
アフターピルの副作用によって、吐き気を感じる方もいます。吐き気を軽減するためには、以下の対策が有効です。
- 食後に服用する:
胃の中に食べ物がある状態であれば、アフターピルが胃の粘膜を直接刺激するのを防ぎ、吐き気を軽減できます。食後30分以内の服用がおすすめです。 - 寝る前に服用する:
服用後に眠ることによって、症状が落ち着きやすいことがあります。
それでも吐き気が続いたり嘔吐したりした場合は、医療機関に相談してください。特に、服用後3時間以内に嘔吐した場合は、アフターピルの効果が十分に得られない可能性があります。追加で服用が必要となることもあるので、医師の指示に従ってください。吐き気止めを処方してもらうことで収まることもあります。
4. アフターピル服用後の注意点
アフターピルを服用する際は、以下のことに注意しましょう。
避妊効果の持続期間:服用後も性行為を続ける場合は別の避妊法が必要
アフターピルはあくまで緊急避妊のための手段であり、その効果は一時的なものです。避妊効果が継続するわけではありません。
再び性行為を行う場合は、コンドームの使用や低容量ピルの服用、子宮内避妊器具(IUD)の使用など、必ず別の避妊法を使用する必要があります。
生理周期への影響:早まったり遅れたりする可能性
アフターピルを服用すると、生理周期に影響が出る場合があります。
通常、生理は28日周期で訪れますが、アフターピルの服用によってこの周期が変化することがあります。
生理が早まる場合、出血量も通常と異なるケースが多いでしょう。多くなる場合もあれば、少量の出血で済む場合もあります。また、逆に1週間程度遅れることもあります。
注意が必要なのは遅れる場合です。1週間以上遅れているなら、妊娠の可能性もあります。市販の妊娠検査薬で確認するか、医療機関を受診しましょう。
副作用の可能性と対処法:吐き気、頭痛、不正出血など
アフターピル服用後、吐き気や頭痛、不正出血といった副作用が現れる可能性があります。副作用の程度や症状には個人差があり、必ずしも全ての人に現れるわけではありません。主な副作用とその対処法は以下の通りです。
副作用 | 対処法 |
---|---|
吐き気 | 食後や寝る前に服用することで軽減できる場合がある。症状が重い場合は、医師や薬剤師に相談すれば吐き気止めを処方してもらえることも。 |
頭痛 | 市販の鎮痛薬で対処可能。ただし、持病がある場合や他の薬を服用している場合は、医師または薬剤師に相談を。 |
不正出血 | アフターピル服用後、月経とは異なる少量の出血が見られることがある。ほとんどの場合心配ないが、出血が長引いたり、量が多かったりする場合は、医療機関を受診すること。 |
その他 | 倦怠感、乳房の張り、めまいなどが起こる可能性もある。 |
副作用が強く、つらい場合は、我慢せずに医療機関を受診しましょう。また、稀ではありますが、重篤な副作用が起こる可能性もゼロではありません。少しでも異変を感じたら、すぐに医療機関に相談することが大切です。
緊急避妊の繰り返し使用は避ける
アフターピルは緊急時に使用するものです。繰り返し使用することで、ホルモンバランスが乱れ、生理不順や不正出血などの副作用が起こり、体に負担がかかる可能性もあります。通常の避妊法としての使用は避けるべきです。通常の避妊法としては、以下の方法を実践するとよいでしょう。
避妊法の種類 | 失敗率 | 説明 |
---|---|---|
低用量ピル | 0.3% | ホルモンバランスを調整することで排卵を抑制し、ほぼ確実に妊娠を防げる。ただし、毎日服用せねばならない。 |
IUD(子宮内避妊器具) | 0.2~0.8% | 子宮内に器具を挿入することで、精子が子宮に入らないようにしたり、受精卵が着床したりするのを防ぐ。一度挿入すれば、長期間避妊効果が持続する。 |
コンドーム | 2~15% | 性行為のたびに装着することで、物理的に精子と卵子の接触を防ぐ。性感染症の予防にも効果的。 |
また、アフターピルは避妊の失敗を完全に防ぐものではありません。緊急避妊が必要な状況を繰り返さないためにも、普段からより確実性の高い避妊法を実践しましょう。
妊娠検査薬の使用時期
アフターピル服用後、すぐに妊娠検査薬を使用しても正確な結果は得られません。妊娠検査薬は、体内のhCGホルモンの濃度を検出することで妊娠の有無を判断するものです。hCGホルモンは、受精卵が子宮に着床した後に分泌され始め、徐々に濃度が高くなります。そのため、アフターピル服用直後ではhCGホルモンが十分に分泌されておらず、検査結果が陰性となる可能性が高いのです。
尿中hCG検査薬は、性行為から3週間後以降、または生理予定日から1週間後以降に検査するようにしましょう。生理が予定日より遅れている場合は、1週間以上経過してから検査してください。
より早く正確な結果を知りたい場合は、医療機関を受診し、血液検査を受けることをおすすめします。血液検査は、尿中hCG検査薬よりも感度が高いため、性行為から10日以降であれば妊娠の有無を判定できます。
検査薬の種類 | 使用時期 |
---|---|
尿中hCG検査薬(市販の妊娠検査薬) | 性行為から3週間後以降または生理予定日から1週間後以降 |
血液検査(医療機関で実施) | 性行為から10日後以降 |
5. アフターピルに関するよくある質問(FAQ)
ここではアフターピルについてよくある質問とその回答を紹介します。
複数回服用しても大丈夫?
アフターピルはあまり何度も服用することはおすすめしません。繰り返し使用することで、ホルモンバランスが乱れ、生理不順や不正出血などの副作用が起こる可能性があるからです。
あくまで緊急用とし、通常は、コンドームの使用など、他の避妊方法を実践するようにしてください。
副作用が心配です
アフターピルの服用によって、副作用が現れる可能性はあります。どんな副作用がどの程度現れるかは人によります。ほとんどの場合、現れたとしても数日以内に自然に治まります。しかし、症状が重い場合や長引く場合は、速やかに医療機関を受診してください。
以下の表では主な副作用とその対処法についてまとめています。
副作用 | 説明 | 対処法 |
---|---|---|
吐き気 | 副作用としては最も多い。 | 食後や寝る前の服用で軽減できる場合も。 |
頭痛 | 比較的起こりにくい症状。 | 市販の鎮痛剤で対処可能。 |
不正出血 | 生理とは異なる出血が見られる。 | ホルモンバランスの変動による一時的な症状なので様子見を。出血が続く場合は医師に相談。 |
乳房の張り | ホルモンの影響による。 | 一時的な症状であり、時間の経過とともに改善。 |
めまい | まれな症状 | 安静にして様子見を。 |
倦怠感 | 比較的まれな症状 | 無理せず、休息を。 |
避妊に失敗したらどうすればいい?
アフターピルは高い避妊効果がありますが、効果は100%ではありません。
アフターピルを服用したにも関わらず、生理が来ない、またはいつもと違う症状がある場合は、妊娠の可能性も考えられます。その場合は、落ち着いて以下の手順で対応しましょう。
- 妊娠検査薬を使用する:性行為から2週間後以降であれば検査可能。
- 医療機関を受診する:妊娠検査薬で陽性反応が出た場合、または陰性反応でも妊娠の可能性が否定できない場合は、速やかに医療機関(産婦人科)の受診を。
妊娠の可能性は?
アフターピルを服用しても、100%妊娠を防げるわけではありません。種類や服用タイミングによって避妊成功率は異なります。服用後も妊娠の可能性はゼロではないことを理解しておくことが大切です。
特に以下の症状が現れた場合は、妊娠の可能性を考慮し、速やかに産婦人科を受診してください。
- 生理が来ない、またはいつもと違う
- 妊娠検査薬で陽性反応が出る
- つわり、だるさ、頻尿などの妊娠初期症状が現れる
6. まとめ:アフターピルを正しく理解し、適切に使用するために
アフターピルは、緊急避妊のための手段であり、望まない妊娠を防ぐために有効です。しかし、あくまで緊急避妊用なので、通常の避妊法の代わりとしての使用は避けましょう。
また、人によっては副作用の可能性もあります。症状がひどい場合は医療機関を受診してください。
アフターピルについて正しく理解し、自分の体は適切に守ってください。