【医師監修】アフターピルの避妊効果と副作用|緊急避妊薬の種類別に説明

避妊に失敗するなどして、望まない妊娠が心配な場合、速やかにアフターピルを服用することが大切です。ただし、その効果は100%ではなく、副作用が起こる可能性もあるため、医師の指導のもと、適切に使用しなければなりません。

本記事では、アフターピルの避妊効果と副作用を薬の種類別に解説します。

目次

1. アフターピルの種類と効果

アフターピルには主に3つの種類あり、それぞれ効果や作用する仕組みが異なります。それらを理解したうえでお薬を選ぶ、さらにそれを処方できる病院をえらぶことが大切です。

①ヤッペ法-低推奨(避妊に力を入れていないクリニックで処方)

アフターピルの中でもヤッペ法は、取り入れているクリニックが多い緊急避妊法です。一般的な中用量ピルを通常より多く服用することで避妊効果が期待できます。

ただし、副作用として嘔吐や吐き気が起こるリスクが他のアフターピルと比べて高いため、避妊効果が低くなる可能性もあります。

– ヤッぺ法が作用する仕組み

中用量ピルであり、卵胞ホルモンと黄体ホルモンを含む「プラノバール」を通常より多く服用することで、排卵を抑制し、子宮内膜を変化させることで受精卵の着床を防ぎます。

②72時間用アフターピル(マドンナ・ノルレボ錠など)

72時間用アフターピルは、性交渉後72時間以内に服用することで高い避妊効果が期待できる緊急避妊薬です。代表的な薬剤にマドンナやノルレボ錠があります。

– 72時間用アフターピルの作用機序

黄体ホルモンの作用によって排卵の遅延または抑制をし、子宮内膜の変化による着床を防ぎます。さらに精子の運動を妨げ受精を防ぎます。

③120時間用アフターピルー推奨(エラ・エラワンなど)

120時間用アフターピルは、性交渉後最大120時間(5日間)まで服用可能な緊急避妊薬です。日本では「エラ」や「エラワン」という商品名で知られています。

– 120時間用アフターピルの作用機序

「ウリプリスタル酢酸エステル」という選択的プロゲステロン受容体調節剤を用いることで排卵を阻害し、子宮内膜の受容体にも作用することで、着床を阻害します。また子宮頚管の粘液を変化させることで精子の侵入を防ぎ妊娠を防ぎます。

薬の種類別・服用タイミング別の避妊成功率

アフターピルの避妊成功率は、服用のタイミングによって大きく変わり、性交後できるだけ早く服用することが重要です。ただし、120時間用アフターピルだけは、120時間以内であれば服用のタイミングによる効果に差はありません。

種類別の避妊成功率は以下の通りです。

服用タイミングヤッペ法72時間用アフターピル120時間用アフターピル
24時間以内約70%約95%約99%
72時間以内約30~50%約89%約98%
120時間以内約98%

注意点:アフターピルは100%避妊を保証するものではない

アフターピルは高い避妊効果を持つ緊急避妊薬ですが、100%の避妊を保証するものではありません。その理由として、以下の点が挙げられます。

  1. 服用タイミング:薬の効果を得られるタイミングに限りがある
  2. 個人差:体質や体重などにより、効果に差が生じる可能性がある
  3. 他の要因:排卵のタイミングや、性行為の頻度なども影響する

アフターピルを服用しても妊娠の可能性が完全になくなるわけではないため、次の生理が来るまでは妊娠の可能性をえ、必要に応じて妊娠検査を行うことをおすすめします。

2. アフターピルの副作用

アフターピルには副作用もあります。個人差などもあるため、必ずしも現れるとは限りませんが、注意が必要です。現れたとしても一時的なものであり、自然に解消するはずですが、症状がひどい場合や長時間続く場合は医療機関を受診してください。

アフターピルの主な副作用の比較

アフターピルの服用による主な副作用としては、吐き気や嘔吐、頭痛、乳房痛、不正出血、めまいが挙げられます。特にヤッペ法とそれ以外のアフターピルでは、下図のように起こりやすい副作用の種類や程度に違いがあります。

副作用ヤッペ法72時間用・120時間用アフターピル
吐き気非常に強い(70-80%)中程度(20-30%)
嘔吐頻繁(50%以上)まれ(5%未満)
頭痛中程度軽度
乳房痛軽度軽度
不正出血頻繁やや頻繁
めまい中程度軽度

ヤッペ法は高用量のホルモン剤を使用するため、副作用が強く現れやすい傾向があります。特に吐き気と嘔吐の症状が現れやすく、服用後に体調不良を訴える方が多いです。

一方、72時間用・120時間用のアフターピルは、ヤッペ法と比較して副作用は現れにくいといえます。しかし、個人差があるため、まったく副作用がないわけではないため、注意が必要です。

また、どちらの方法でも、不正出血は比較的高い確率で起こります。これは薬の作用によるもので、通常は心配する必要はありませんが、出血が長引く場合は医療機関に相談しましょう。

副作用への対処法

アフターピルの副作用の多くは、一時的なものであり自然に回復します。しかし、症状を和らげるためにも対処法を知っておきましょう。

症状対処法
吐き気・嘔吐・制吐剤の服用(医師の指示に従ってください)
・少量の水分を頻繁に摂取
・消化の良い軽食を少量ずつ摂取
頭痛・市販の鎮痛剤の服用(アセトアミノフェンなど)
・十分な休息と睡眠
不正出血・生理用ナプキンの使用
・清潔を保つ
乳房の張りサポート力のあるブラジャーの着用
めまい急な体勢変更を避け、ゆっくり動く

これらの対処法で症状が改善しない場合や、症状がひどい場合は、速やかに医療機関を受診してください。

症状が重い場合の医療機関への相談

アフターピルの副作用は通常、軽度で一時的なものです。しかし、もし長時間続いたり、症状がひどかったりする場合は医療機関を受診しましょう。例えば、以下の症状があれば速やかな受診が必要です。

  • 激しい腹痛や下腹部痛がある
  • 大量の出血が続く
  • 38度以上の発熱がある
  • 吐き気や嘔吐が止まらない
  • めまいや失神
  • 息苦しさや胸痛がある

医師に相談する際は、服用したアフターピルの種類や服用時期、現在の症状などを正確に伝えることが大切です。適切な診断と治療につながります。

3. アフターピルの入手方法

アフターピルを入手するには、医療機関を受診するか、オンライン診療を受けるかの2つの方法があります。

いずれの方法でも、医師の診断と処方が必要です。自己判断での服用は避け、必ず医療機関を通じて入手するようにしましょう。

医療機関での処方

アフターピルは医療機関を受診して処方してもらうのが望ましいところです。医療機関の受診には次のようなメリットがあります。

  • 医師による診察を受けられるので安心できる
  • 副作用や注意点について詳しく説明を受けられる
  • 性感染症の検査も同時に受けられる場合がある

ただし、次のような注意点もあるため、事前によく調べることをおすすめします。

  • ヤッぺ法や72時間の避妊方法しか用意のない医療機関が多い
  • 休日・夜間は対応していない医療機関が多い
  • 予約が必要な場合がある
  • 避妊に対応していない医療機関もある

また、アフターピルを処方してもらえる主な医療機関は、以下の3つです。

医療機関の種類特徴
産婦人科最も一般的。女性特有の悩みにも対応
婦人科産科を併設していない場合もある
性感染症外来性感染症の検査も同時に受けられる

受診前には、事前に電話で確認することをおすすめします。

また、今すぐ必要でなくても、緊急時に備えて、近隣のアフターピル処方可能な医療機関をリストアップしておくと安心です。

オンライン診療での処方

アフターピルを入手する方法として、近年注目されているのがオンライン診療です。オンライン診療とは、スマートフォンやパソコンを使って医師の診察を受け、処方箋を発行してもらえる方法です。

オンライン診療には以下のようなメリットがあります。

  • ほとんどのオンライン診療では120時間と72時間のアフターピルの取り扱いがある
  • 自宅や職場から受診可能
  • 24時間365日いつでも受診可能
  • 待ち時間なしで素早く診察
  • プライバシーが守られる

ただし、次のようなデメリットもあることに注意が必要です。

  • 対面でないのでオンライン診療が不安な方には向いていない
  • スマホなどの操作で問診票の記入ができない方は向いていない
  • 大体のオンライン診療がLINEに登録するものなのでLINEがないとできない

また、オンライン診療を利用するなら、厚生労働省の認可を受けた適切な医療機関を選ぶようにしましょう。

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