EDは、自力で治療できる場合もあります。自力で治せるかは原因により、生活習慣の悪化によって引き起こされている場合は、生活習慣を改めることで、症状も改善する可能性が高いでしょう。一方、年齢や病気が原因の場合は専門医を頼るのが賢明です。早めに医師による診察を受けましょう。
本記事では、EDの治療法について解説します。
監修医師
各務 康貴
医療現場で予防の重要性や予防に取り組んでもらうことの難しさを痛感。美容という切り口で本質的な予防につなげる入口として、口腔という臓器に興味を持つ。口腔環境が多くの臓器に影響を及ぼし、多くの病気に繋がってしまうというポイントから予防について新聞・テレビ・WEBメディア等で情報を発信している。
EDの原因と自力で改善する可能性
勃起不全(ED)の原因には様々なことが考えられます。自力で改善できるものと、専門的な治療が必要なものがあるため、まずは原因を特定することが大切です。
生活習慣が原因なら自力で改善する可能性がある
EDの原因には、生活習慣が大きく関係しています。
特に食生活、運動習慣、睡眠、ストレスなどが勃起機能に影響を及ぼします。
<食生活>
・不規則な食生活や過剰な脂肪摂取は勃起不全のリスクを高めます
・野菜や果物、タンパク質を適切に摂取することが重要です
<運動習慣>
・運動不足は勃起不全の一因になります
・有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせが理想的です
※ただし、過度な運動は逆効果の可能性があります
<睡眠>
・睡眠不足や睡眠の質の低下はEDのリスクを高めます
・質の良い睡眠を確保することが重要です
<ストレス>
・過度なストレスは勃起不全の原因となり得ます
・ストレスを適切に発散する方法を見つけることが大切です
このように、生活習慣が原因となるため、改善によってEDを予防したり、症状を和らげたりすることができる可能性があります。
根本原因によっては自力での改善が難しい
勃起不全の原因は様々です。加齢による身体の老化が原因の場合は、生活習慣の改善で症状の進行を遅らせることはできるかもしれませんが、完治は難しいでしょう。
また、以下のような病気が原因の勃起不全では、自力のみでは改善は期待できません。
病気 | 説明 |
---|---|
糖尿病 | 血糖値の高い状態が続くと、神経や血管が傷つきやすくなります。 |
前立腺肥大症 | 前立腺が大きくなり、尿道が圧迫されて血液の流れが悪くなります。 |
腎臓病 | 腎機能の低下によって、血中の老廃物が溜まり血管が傷つきます。 |
このような場合は、生活習慣の改善に加えて、医師による適切な治療が必要です。
自力でのEDの改善法
EDを自力で改善するための具体的な方法としては、以下の4つが挙げられます。
- 食生活の見直し
- 運動習慣の確立
- 睡眠の質の改善
- ストレス対策
それぞれについて詳しく解説します。
(1)食生活の見直し
EDの改善には栄養バランスの良い食生活をすることが大切です。
以下の点に留意しながら、改善を心がけましょう。
- たんぱく質、ビタミン、ミネラルを適量摂取する:勃起には十分な血流が必要なため、血管の健康を維持する栄養素を意識的に摂取する
- 脂質のコントロール:過剰な脂質摂取は動脈硬化を招き、EDのリスクを高めるため、良質の脂質を控えめに摂る
EDに即効性のある特定の食品はありません。
偏った食事ではなく、バランスの良い食生活を送ることが大切なのです。
また、EDに良い食品の例としては次のようなものが挙げられます。
【EDに良い食材の例】
食品群 | 代表例 |
---|---|
野菜・果物 | トマト、にんにく、バナナ |
穀物 | 玄米、全粒小麦粉 |
タンパク質 | 肉、魚、卵、豆腐 |
脂質 | 亜麻仁油、オリーブオイル |
(2)運動習慣の確立
勃起不全の改善には、運動が非常に効果的です。できれば有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせるのが理想的です。下表では、それぞれの効果と運動例についてまとめました。
運動の種類 | 効果 | 具体例 |
有酸素運動 | ・血行を促進し、勃起に必要な血液の流れを改善 ・内分泌系のバランスを整え、性ホルモンの分泌を促進 ・全身の新陳代謝を活発化させ、勃起に影響する老廃物を排出 | ・ウォーキング 30分 ・ジョギング 20分 ・自転車 30分 |
筋力トレーニング | ・骨盤底筋群の強化で、勃起時の陰茎の立ち上がりを改善 ・ホルモンバランスの是正で、性欲や勃起力のアップ | ・スクワット 3セット ・腹筋 2セット ・背筋 2セット |
運動は一般的にEDの改善に効果がありますが、過度な運動は逆効果となる可能性があります。 特に無理な持久力運動は、一時的に血中テストステロン値を低下させてしまうためです。
例えば、フルマラソンなどの長距離走は、レース直後にテストステロン値が大幅に低下することが報告されています。 テストステロンは勃起に重要なホルモンですので、一時的にEDが起きやすくなるリスクがあります。
また、過度の筋力トレーニングも同様に注意が必要です。 重量挙げの選手では、レベルが上がるにつれてテストステロン値の低下が見られるケースがあります。
(3)睡眠の質の改善
睡眠不足もED症状を悪化させる一因となります。睡眠不足が続くと、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が亢進し、勃起に必要な一酸化窒素の産生を阻害してしまうからです。
逆に、十分な睡眠を取ることで、成長ホルモンやテストステロンなどの男性ホルモンの分泌が促進されます。これらのホルモンは勃起に不可欠な役割を果たすため、睡眠の質を高めることがEDの改善につながるのです。
睡眠の質を上げるためのポイントとしては、以下の3つが挙げられます。
- 就寝前の入浴:体を温めることで、睡眠の質が高まりやすくなる
- 消灯時間を決める:規則正しい生活リズムにすることで、眠りやすくなる
- 寝室の環境を整える:照明や温度、湿度に気をつけ、眠りやすい環境にする
睡眠の質が改善されれば、ED症状の緩和に加え、全身の調子が上がり、生活の質の向上も期待できるるでしょう。ただし、睡眠の質だけでは根本的な改善は期待できません。他の生活習慣の見直しと併せて実践することが重要です。
また、過剰な睡眠も問題となります。標準の睡眠時間を5-7時間とすると、5時間以内の睡眠でEDのリスクが1.28倍、9時間以上で1.52倍のリスクといわれいています。つまり、目安となる睡眠時間は、1日あたり5〜7時間です。規則正しい生活リズムを心がけ、質の良い睡眠を確保するようにしましょう。
(4)ストレス対策
ストレスは自律神経の乱れを引き起こし、勃起不全の一因となります。現代社会ではストレスを完全に排除することは難しいですが、ED症状の改善にためにも、適度に発散するようにしましょう。
ストレス発散の方法として有効なのが、運動やリフレッシュ活動です。適度な運動は血行を良くし、自律神経の乱れを是正する作用があります。
具体例としては、以下のような方法が考えられるでしょう。
運動系 | リフレッシュ系 | コミュニケーション系 |
---|---|---|
ウォーキング | 旅行・温泉 | 家族や友人と会話 |
ジョギング | 読書 | カウンセリング受診 |
ヨガ | 映画・音楽鑑賞 | SNSでの交流 |
ストレッチング | 園芸・DIY |
趣味や運動、旅行などを通じて気分転換を図ることをおすすめします。また、趣味活動や旅行、温泉など、自分なりのリフレッシュ法を見つけることも大切です。家族や友人との会話を通じてストレスを発散するのも一案です。
ただし、以下の点には注意をし、体に過度な負担をかけないようにしましょう。
- 1日の活動時間が6〜8時間を超えない
- 睡眠時間は7時間以上確保する
- 休養を取れる日が週に1日はある
気分転換をしようと頑張りすぎて、生活のリズムを乱したり睡眠不足になったりすれば、逆効果です。かえってEDの症状を悪化させる恐れがあります。
自力でED症状を改善するためにも、ストレス発散と生活リズムのバランスを保つよう注意しましょう。
薬物療法によるED治療
EDの改善には薬物療法も有効な選択肢の一つです。特にEDの原因が身体的なものである場合、勃起不全の症状を一時的に改善させる勃起薬の服用が効果的です。
代表的な勃起薬には以下のようなものがあります。
薬剤名 | 有効成分 |
---|---|
バイアグラ | シルデナフィル |
レビトラ | バルデナフィル |
ザイデナ | ウデナフィル |
ここではEDの薬物療法とその注意点について解説します。
勃起薬の服用はすぐに効果を得たい方に適している
EDの薬物療法として、勃起不全に効果がある薬剤が処方されることがあります。代表的な勃起薬には、バイアグラ、シアリス、レビトラなどがあります。これらの薬は、血管を拡張させることで陰茎への血流を促進し、勃起をしやすくする作用があります。
それぞれの薬の服用のタイミングは、以下のように異なります。
薬剤名 | 服用タイミング |
---|---|
バイアグラ | 服用から30分~1時間前後 |
シアリス | 服用から30分~1時間前後(効果は36時間持続) |
レビトラ | 服用から15~30分前後 |
勃起薬の服用によってEDの症状は一時的に改善しますが、根本的な原因は解決しません。そのため、生活習慣の見直しを組み合わせることや根本疾患の治療などを行うことが重要です。
原因別の適切な薬剤の選択が重要
EDの原因には様々なものがあり、原因に応じて適切な薬剤を選択する必要があります。主な薬剤と適応症は以下の通りです。
薬剤名 | 適応症 |
---|---|
シルデナフィル | 心因性ED、動脈硬化性ED |
タダラフィル | 心因性ED、動脈硬化性ED、糖尿病性ED |
バルデナフィル | 心因性ED、動脈硬化性ED、糖尿病性ED |
アバナフィル | 心因性ED、動脈硬化性ED |
これらの薬剤は、一酸化窒素(NO)の働きを高めることで陰茎海綿体への血流を改善し、勃起を助ける作用があります。ただし、効果の現れ方や持続時間は薬剤により異なるため、自身の症状に合わせて医師と相談しながら選択することが重要です。
副作用へのリスクも存在するので必ず医師の診察を受けて服用を
勃起不全の薬物療法に用いられる勃起薬には、様々な副作用のリスクが存在します。主な副作用としては、以下のようなことが挙げられます。
- 頭痛
- 顔面紅潮
- 消化器症状(胃もたれ、下痢など)
- 視覚異常(霞みがかかるなど)
- 鼻づまり
これらの副作用は一時的なものが多いものの、重篤な症状に至る場合もあります。特に、心血管系の疾患を持つ人は、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まるため、医師に相談の上で慎重に使用しなければなりません。
また、一部の薬剤(ニトロ剤、HIVプロテアーゼ阻害剤など)は勃起薬との併用によって、重篤な副作用が起こる可能性もあります。他の薬剤の服用状況も医師に正しく伝えることが大切です。
生活習慣の見直しと薬物療法の併用が有効
EDの治療においては、生活習慣の改善と薬物療法を併用することが大切です。
食生活の改善、運動習慣の確立、睡眠の質の向上、ストレス対策など、生活習慣を見直すことで改善することもありますが、それだけでは根本的な解決はしない場合もあります。そのような場合は、医師の判断のもと、適切な薬物療法を行うことが推奨されます。
例えば、勃起不全の原因がうつ病などの精神疾患にある場合は、抗うつ剤などの薬物療法が有効です。また、糖尿病性勃起障害の場合は、糖尿病治療薬と合わせて勃起薬を服用することになるでしょう。
このように、生活習慣の改善と適切な薬物療法を組み合わせることで、より確実な改善が見込めます。ただし、薬物療法には副作用のリスクもあるため、医師の指示に従うことが大切です。
EDを予防するための生活習慣
EDにならないようにするには、次の生活習慣を身につけるのが望ましいでしょう。
禁煙
EDの予防や改善のためには、喫煙を控えることが大切です。喫煙は血管を収縮させ、血流を悪化させます。陰茎海綿体への血流不足が引き起こされると、勃起不全につながる可能性があります。
実際、喫煙者ではED発症リスクが非喫煙者に比べて約2倍高いことが報告されています。さらに喫煙本数が多いほどリスクが高まると言われています。
一方で、禁煙によりEDリスクは低減するとの研究結果もあります。例えば、ある研究では禁煙後1年で非喫煙者と同等のED発症率になったと報告されています。つまり、禁煙は勃起機能の回復につながる可能性があるのです。
禁煙によるEDリスク低減効果
喫煙状況 | ED発症リスク |
---|---|
非喫煙者 | 基準 |
喫煙者 | 約2倍 |
禁煙後1年 | 非喫煙者並み |
禁煙は簡単ではありませんが、勃起不全のリスクを下げる上で大切な生活習慣の一つと言えます。
適度な飲酒
EDの予防のためには、飲酒量を適度にすることも大切です。アルコールは少量なら勃起を助ける作用があります。しかし、飲み過ぎは勃起不全の大きな原因となります。
飲酒量の目安は、男性で1日に純アルコール20グラム以下とされています。これは以下の量に相当します。
飲み物の種類 | 適度な飲酒量 |
---|---|
ビール(アルコール度数5%) | 中ビン1本(500ml)程度 |
ワイン(同12%) | 1杯(120ml)程度 |
焼酎(同25%) | 1合(180ml)弱 |
アルコールには血管を拡張させる作用があり、陰茎への血流を良くする一方で、大量に摂取すると勃起神経の伝達を阻害してしまいます。
また、頻繁に飲酒すると、肝臓に負担をかけるだけでなく、睡眠の質を低下させることが、EDを引き起こしかねません。お酒は節度を守って飲むようにしましょう。
規則正しい生活リズム
EDを予防するには、規則正しい生活リズムを心がけることも重要です。 不規則な生活は、以下のような悪影響をもたらし、EDのリスクを高める大きな要因となります。。
- 睡眠不足による疲労の蓄積
- 食生活の乱れによる栄養バランスの悪化
- ストレスの増大
一方、規則正しい生活リズムを守ることで、以下のようなメリットが期待できます。
メリット | 内容 |
---|---|
質の良い睡眠 | 十分な睡眠時間の確保、睡眠の質の向上 |
適切な食事 | 食事の時間が規則正しくなり、バランスの取れた食生活につながる |
ストレス軽減 | 生活のリズムが整うことでストレスが軽減される |
このように、規則正しい生活リズムはEDの予防に大きく貢献します。就寝時間や食事時間など、自分に合った生活パターンを見つけ、継続的に実践するようにしましょう。
まとめ
EDを自力で改善するには、生活習慣の見直しが重要す。しかし、その原因によっては、生活習慣の改善だけでは不十分で、薬物療法の併用が必要となります。まずは原因を特定し、それに合わせた対策を講じることが大切といえるでしょう。
また、勃起薬の服用による薬物療法によれば、一時的な症状改善が期待できますが、原因に合わせて適切な薬剤を選択することが重要です。また、副作用のリスクにも注意する必要があります。
医師に相談しながら、症状に応じた適切な方法を選択し、EDの改善を目指しましょう。
当サイトの監修医師について
当サイトは、医師資格を有する医師の監修のもと、サイト運営を行なっております。
大分大学医学部医学科卒業。医師として救急医療や在宅医療に従事し、マウスピース歯科矯正hanaravi(ハナラビ)を提供する株式会社DRIPSを創業。
医療現場で予防の重要性や予防に取り組んでもらうことの難しさを痛感。美容という切り口で本質的な予防につなげる入口として、口腔という臓器に興味を持つ。口腔環境が多くの臓器に影響を及ぼし、多くの病気に繋がってしまうというポイントから予防について新聞・テレビ・WEBメディア等で情報を発信している。