■1.はじめに:性病予防薬(PrEP・PEP)の概要
性感染症(STI)は、性行為によって感染する病気の総称です。近年、その予防策として「性病予防薬」が注目されています。性病予防薬には、主に以下の2種類があります。
- PrEP(暴露前予防内服): 性行為の前に継続的に服用することで、特定の性感染症への感染リスクを大幅に低減する薬です。
- PEP(暴露後予防内服): 性行為後に緊急的に服用することで、特定の性感染症への感染リスクを低減する薬です。
これらの予防薬は、主にHIV感染予防を目的として開発されましたが、近年では梅毒や淋病などの他の性感染症への予防効果も期待される「Doxy-PEP(ドキシペップ)」も登場しています。
性病予防薬は、性行為における感染リスクを減らすための有効な手段の一つですが、すべての性感染症を完全に予防できるわけではありません。また、正しい知識に基づいて使用することが非常に重要です。
この記事では、性病予防薬の種類や効果、入手方法、費用、注意点などについて詳しく解説していきます。
2.性病予防薬の種類と対象疾患
性病予防薬には、主なものとしてPrEP、PEP、そしてDoxy-PEPがあります。これらは、性行為の前後で内服することで、特定の性感染症への感染リスクを低減させる目的で使用されます。
(1)PrEP(暴露前予防内服)とは
PrEPは、感染リスクのある性行為を行う前に毎日、または特定のタイミングで内服する薬です。主にHIV感染予防を目的として使用されます。
(2)PEP(暴露後予防内服)とは
PEPは、感染リスクのある性行為を行った後、72時間以内に内服を開始する薬です。これも主にHIV感染予防を目的として使用されます。
(3)Doxy-PEP(ドキシペップ)とは
Doxy-PEPは、感染リスクのある性行為を行った後、72時間以内に内服する抗生物質(ドキシサイクリン)です。こちらは、主に細菌性の性感染症(梅毒、淋病、クラミジアなど)の予防を目的として研究・使用が進められています。
(4)それぞれの予防対象となる性感染症
それぞれの薬が主に予防対象とする性感染症は以下の通りです。
予防薬 | 主な予防対象 |
---|---|
PrEP | HIV |
PEP | HIV |
Doxy-PEP | 梅毒、淋病、クラミジアなど(細菌性性感染症) |
これらの薬は、それぞれの対象疾患に対して効果を発揮しますが、すべての性感染症を予防できるわけではありません。
3.性病予防薬の効果とメカニズム
性病予防薬は、特定の性感染症に対して予防効果を発揮しますが、そのメカニズムは薬剤の種類によって異なります。
PrEP(暴露前予防内服)は、主にHIVウイルスが増殖するのを防ぐことで感染を予防します。毎日または性行為の前に服用することで、体内の薬剤濃度を維持し、ウイルスが細胞に侵入・増殖するプロセスを阻害します。
PEP(暴露後予防内服)は、性行為後に服用することで、体内に侵入した可能性のあるHIVウイルスなどの増殖を抑え、感染成立を防ぎます。性行為後、できるだけ早く(72時間以内が望ましい)服用を開始し、28日間継続することで効果が期待できます。
Doxy-PEP(ドキシペップ)は、特定の細菌性感染症(梅毒、クラミジア、淋病など)に対して、性行為後に抗生物質であるドキシサイクリンを服用することで感染リスクを低減します。細菌の増殖を抑制する作用があります。
予防対象となる主な性感染症と薬剤の作用メカニズムは以下の通りです。
薬剤 | 主な予防対象 | メカニズム |
---|---|---|
PrEP | HIV | ウイルスの増殖抑制 |
PEP | HIV(その他、医師の判断) | ウイルスの増殖抑制 |
Doxy-PEP | 梅毒、クラミジア、淋病 | 細菌の増殖抑制 |
これらの薬剤は、正しく服用することで高い予防効果が期待できますが、100%ではないこと、他の性感染症には効果がない場合があること、予防効果の持続期間は薬剤の種類や服用方法によって異なることに留意が必要です。
(2)予防効果の持続期間と注意点
性病予防薬の効果は、種類や飲み方によって持続期間が異なります。
- PrEP: 毎日服用する場合、血液中の薬剤濃度が安定し、性行為によるHIV感染リスクを大幅に低減できます。性行為の2時間前に2錠、その後24時間後に1錠、さらに48時間後に1錠を服用する方法(オンデマンドPrEP)でも効果が期待できますが、毎日服用の方がより安定した予防効果が得られます。服用を中止すると、数日で薬剤濃度が低下し効果がなくなります。
- PEP: 感染リスクのある性行為後、72時間以内に内服を開始し、28日間継続することで効果を発揮します。この28日間の内服を完了しないと、十分な予防効果が得られない可能性があります。
- Doxy-PEP: 性行為後72時間以内に服用することで、一部の細菌性性感染症(梅毒、クラミジア、淋菌など)のリスクを低減するとされています。
いずれの予防法も、内服期間中は定期的な性病検査を受けることが重要です。また、これらの予防薬はHIVや一部の細菌感染症に対して効果がありますが、すべての性感染症(例:ヘルペス、尖圭コンジローマなど)を完全に予防できるわけではありません。引き続き、コンドームの使用など他の予防策と組み合わせることが推奨されます。
4.性病予防薬の入手方法
性病予防薬であるPrEP、PEP、Doxy-PEPを入手するには、医師の処方箋が必要です。主な入手方法は以下の2通りです。
- (1)医療機関での処方(対面診療)
性感染症を専門とする泌尿器科、感染症内科、あるいは一部の皮膚科などで処方を受けることができます。医師による問診や検査を受け、適応があると判断されれば処方されます。直接医師に相談できるため、不安な点や疑問を解消しやすい方法です。 - (2)オンライン診療での処方
近年、オンライン診療に対応しているクリニックが増えています。自宅や都合の良い場所から診察を受け、処方薬を郵送してもらうことができます。忙しい方や、対面での受診に抵抗がある方にとって便利な選択肢です。
入手方法 | 特徴 |
---|---|
医療機関(対面) | 医師に直接相談、詳しい検査が可能 |
オンライン診療 | 場所を選ばない、手軽に利用できる |
いずれの方法でも、必ず医師の診察を受け、適切な用法・用量を守ることが重要です。自己判断での使用は避けましょう。
5.性病予防薬の費用相場
性病予防薬であるPrEP、PEP、Doxy-PEPの費用は、処方を受ける医療機関や薬剤の種類、処方日数などによって異なります。保険適用外となる自由診療での処方が一般的です。
- PrEPの費用相場:
- 1ヶ月あたり1万円~3万円程度が目安です。ジェネリック医薬品を選択すると費用を抑えられる場合があります。
- PEPの費用相場:
- 28日分の薬剤で10万円~20万円程度かかることが多いです。複数の薬剤を組み合わせるため高額になりやすい傾向があります。
- Doxy-PEPの費用相場:
- 処方日数や薬剤の種類によりますが、数千円~1万円程度が目安となることが多いです。
薬剤 | 期間 | 費用相場 |
---|---|---|
PrEP | 1ヶ月 | 1万円~3万円 |
PEP | 28日分 | 10万円~20万円 |
Doxy-PEP | 必要に応じ | 数千円~1万円程度 |
(2)保険適用について
性病予防薬(PrEP、PEP、Doxy-PEP)の費用についてご説明しましたが、これらの薬剤は基本的に保険適用外となります。これは、病気の「治療」ではなく「予防」目的で使用されるためです。
そのため、費用は全額自己負担となり、医療機関や処方される薬剤の種類、量によって費用が大きく異なります。
薬剤の種類 | 保険適用 |
---|---|
PrEP | 適用外 |
PEP | 適用外 |
Doxy-PEP | 適用外 |
例外として、特定の条件下(例:医療従事者が業務中に針刺し事故などでHIVに曝露した場合のPEPなど)では保険適用となるケースがごく稀にありますが、一般的には自由診療となります。
クリニックによっては、薬剤の価格設定や診察料が異なるため、事前に確認することが重要です。また、公的な支援制度なども現状では限定的です。
6.性病予防薬の副作用と注意点
性病予防薬を服用するにあたり、副作用やいくつかの注意点があります。正しく理解し、安全に使用することが重要です。
(1)主な副作用
PrEPやPEP、Doxy-PEPには、以下のような副作用が報告されています。
- 吐き気、下痢
多くの場合、軽度で一時的なものですが、症状が続く場合や気になる場合は医師に相談してください。
(2)内服上の注意点(飲み忘れ、飲み方など)
薬剤の種類や用法によって飲み方が異なります。医師の指示に従い、決められた時間に服用することが大切です。飲み忘れた場合の対応も、事前に医師に確認しておきましょう。
(3)耐性菌のリスクと対策
特にDoxy-PEPのように抗生物質を使用する場合、耐性菌が発生するリスクがあります。不必要な使用を避け、医師が必要と判断した場合のみ服用するようにしてください。
(4)性病検査の重要性
予防薬を服用していても、完全に感染を防げるわけではありません。また、予防対象外の性感染症もあります。定期的な性病検査は、感染の早期発見と適切な治療のために非常に重要です。予防薬の使用と並行して、必ず検査を受けましょう。
7.リリモアクリニックでの料金
Doxypep(淋病・クラミジア・梅毒予防)
10回分 1400円/回14000円 税別
20回分 1200円/回24000円 税別
30回分 1000円/回30000円 税別
定期3回 2500円/回 7500円 税別
定期5回 2000円/回 10000円 税別
PrEPやPEP(HIV予防)に関してもお薬の用意がございます
ご料金に関してはお問い合わせください。
8.まとめ:正しい知識で性病を予防しよう
性病予防薬であるPrEP、PEP、そしてDoxy-PEPは、性感染症の予防に有効な選択肢です。それぞれの薬には予防できる疾患や内服方法に違いがあります。
- PrEP: 継続的な内服でHIV感染リスクを低減。
- PEP: 性行為後の緊急的な内服でHIV感染リスクを低減。
- Doxy-PEP: 性行為後の緊急的な内服で梅毒、クラミジア、淋菌のリスクを低減(ただし耐性菌のリスクに注意)。
これらの予防薬は、正しい知識を持ち、適切な方法で使用することが非常に重要です。
予防薬 | 主な予防対象 |
---|---|
PrEP | HIV |
PEP | HIV |
Doxy-PEP | 梅毒、クラミジア、淋菌(一部) |
性病予防薬の利用を検討する際は、必ず医療機関で医師の診察を受け、ご自身の状況に合った薬を選択し、副作用や注意点について十分な説明を受けてください。予防薬だけに頼らず、コンドームの使用や定期的な性病検査も併せて行うことで、より効果的に性感染症から身を守ることができます。正しい知識を身につけ、性病予防に取り組みましょう。